[02]日経新聞の記事の特徴

日経新聞の読み方

 日経新聞に限らず、新聞記事を読むときには大切な心構えがあります。それを知らずに記事を読み進めると、誤解が生じてしまう場合があります。

記事の鉄則|意見なのか事実なのか

事実と意見
事実と意見

 新聞記事には”事実(FACT)”と”意見(OPINION)”があります。事実とは”できごと”です。ただし、事実だからと言ってそれがすべてが”真実”であるとは限らないことも注意が必要です。真実を隠すような事実というもあるので注意しましょう。また、意見とは”筆者の考え”です。事実に関して、筆者がどのように感じているのかを述べています。

《確かな記事になる3つのポイント》

 新聞記事はほとんど”抜粋”や”要約”によって、読みやすいようになっています。そのコンパクトさの中で、「この記事は本当かどうか?」を確認する必要があります。そのポイントは3つです。

  1. 出典(誰が?どこが?発信しているのか。)
  2. 数値(いつ?どれくらい?の規模、時期なのか。)
  3. 対処(どうすべきか?責任は?明示されているか。)

 どれひとつ欠けても”信憑性のある記事”、正確な”事実(FACT)”とは言えません。新聞社が私たちに向け「何の目的で」情報を提供しているのかを確認しながら読み進める必要があります。3つのポイントが欠けている記事が多いですから、それを探してみるのも面白いかも知れません。

 ただし、投資情報に関する記事では、大切なポイント(とくに「3.対処」)が抜けている場合があります。それは、投資にあたってのヒントとも言えるでしょう。※詳細は別記事にて紹介します。

《社説は各新聞の「どうしても言っておきたい意見」》

 意見を伝える代表的な記事は総合面に掲載される<社説>です。<社説>はどの新聞にもあり「その日にどうしても言っておきたい意見」を新聞社のなかでも偉い人がそれはそれは気合を入れて書いています。
 <社説>に限らず、意見が書かれている記事では「新聞社はこう言っているけど自分はこう思う」という心構えが大切です。日経新聞では意見が書かれているのは社説のほか、オピニオン面などがあります。

記事の構造|”前文”を制する者が日経を制す!

 1面に限らず、多くのページの重要な記事(トップ記事)には大きな見出しがついていて、まず目に飛び込んでくるものです。そのほかの記事も、”見出しだけ次々とみて行けば、その日のニュースが丸わかり”と思っていませんか?実はその読み方では時間の割に得られる情報は少ないのです。

《記事の5つの要素》

トップ記事の構成
トップ記事の5つの構成

 効率よく情報をつかむために、まずは新聞記事がどのような構造になっているかトップ記事を見ながら説明しましょう。トップ記事には、次の5つの要素があります。

主見出し
 新聞社がもっとも読者に伝えたい”記事の核”。読んでもらうために、簡潔な文章にまとめています。そのため、助詞や動詞などが省略されています。

❷ソデ見出し
 主見出しを補足するもの。より具体的な表現を使い、内容を容易に推測できるような文章です。

❸前文
 記事の要約。時短な読みか方できるよう、本文を要約したものです。結論から書かれているので、興味のない記事については前文だけ読んで別の記事に進むこともできます。

❹図表
 一覧表や年表、模式図などを使って、文章だけでは理解しにくい部分を表現しています。とくにイメージ重視の読者や、時系列で確認したい読者にとって重要な要素です。

❺本文
 裏付け、関連事項、”経済という観点でみたらどう予想できるか”などの説明文です。

《新聞記事は「結論ファースト」》

 ほぼすべての記事は結論から述べられています。後半になるほど補足や背景の説明が多くなります。❸前文もやはり「結論→補足、背景の説明」という流れになります。見出しほど目立ちませんが、効率よく情報をつかむためには、前文を追いかけるのが正解です。

 前文のある記事は、そこだけ目を通してもだいたいの情報がつかめるようになっているので、記事を読む・読まないは、まずは前文を見てから決めましょう。

《時間がない日は10秒で読める前文をチェック》

 前文がある記事は、1面トップ記事だけではありません。各面のトップ記事に前文があり、朝刊では前文がついている記事は、全部で15本程度です。そこで、各記事の前文だけチェックすれば、1日5分程度で日経新聞が報じる主要なニュースを網羅できます。また、「どうしても新聞を読む時間がとれない」というときでも、1面トップ記事の前文だけはチェックしましょう。これだと、10秒程度で読むことができます

《ダイジェストだけじゃない! 旬の時事用語も勉強できる》

 さらに、1面トップ記事の前文にはオマケがあります。それは、旬の時事用語がわかる、ということです。ほどんどの1面トップ記事の前文には「今、知っておきたい言葉」「新しく出てきてわかりづらい言葉」が、総合面に掲載されている<きょうのことば>で解説されています。前文の中に出てくる言葉ですので、その言葉がどんな文脈で使うべき言葉なのか、いわば「例文」付きで示されることになります。これにより単なる用語解説以上の価値がありますし、記憶の定着という意味でも期待できます。

 前文を読んで、<きょうのことば>が知らない言葉であれば、ぜひ総合面で確認しましょう。

前文の価値
前文の価値

※月曜日の<きょうのことば>総合・経済面です。

記事の鮮度|前文の語尾で時系列がわかる

 テレビやインターネットに比べると、紙の新聞は印刷や配送に時間がかかるので、情報の早さでは負けてしまいます。そこで新聞を読むには、「これはいつの情報なのか?」ということを意識するのがコツです。この「いつ」はある方法で、簡単に見つけられます。

《語尾で読み解く「速報」「続報」「確報」》

それは、「前文の一番はじめの文の語尾」をチェックすることです。

  • 速報
    これまで出ていなかった情報で新聞がいち早く伝えたい情報です。この情報を記事にする場合の語尾は、「〜する」「〜なる」となります。
  • 続報
    すでに報道している情報の続きで、語尾は、「〜している」の形になることが多い。
  • 確報
    「決まったこと」「公になったこと」を時間がたってから紹介するものです。ですから、語尾は「〜なった」「〜した」形が一般的。
速報・続報・確報
速報・続報・確報

曜日ごとの読み方

 日経新聞が「分かりにくいわ〜」「難しいわ〜」と感じられる理由の1つに、「曜日によって読み方を変える必要がある」ことがあります。長年読んでいる人にとっては当たり前のことでも、知らないと戸惑います。

 日経新聞は曜日ごとにはっきりとした特徴があるのがほかの新聞とは違うところです。曜日ごとの紙面の役割を理解して、こちらも「見る目」を変えていかないといけません。

 2021年5月10日の紙面刷新では、とくに月曜日~水曜日に対象読者を絞り込んだようです。

  • 月曜日
    NEXT1000面インサイドアウト面など中小企業をはじめとする新しい仕事のあり方
  • 月・火曜日
    個人の生き方やライフデザインに関して医療・健康面教育面女性面など
  • 水曜日
    注目のスタートアップ面、そして大学面に注目です。
朝刊の紙面構成
朝刊の紙面構成

《平日は”日々のできごと”》

 日経新聞の平日は、火曜日〜土曜日です。
 前日のマーケット情報を中心としたできごとを記載しています。さらに土曜日は1週間のまとめの位置づけとして、株価情報や商品市場での1週間分の情報が掲載されています。

《日曜は見逃せない”先よみの日”》

 日曜日は〝予定の日〟で、この先1週間の日本、世界についての情報が満載です。投資をしている人にとっては、見逃せない日と言えます。こういった曜日ごとの特徴を知ることで、日経新聞を効率よく、あなただけの読み方ができるようになります。

《夕刊は”学びの場”》

 夕刊は、曜日ごとに興味深い特集が組まれています。日常を取り巻く情報誌としての位置づけです。お金だけでなく、さまざまな学びの場とも言えるでしょう。

夕刊の紙面構成
夕刊の紙面構成

《レギュラー紙面》

 基本の紙面構成が分かっていないといけません。ほぼ毎日、掲載されいている内容について確認しておきます。1面からはじまり、マーケット商品面まで、あなたの知りたい情報がどこに掲載されているのかを知っておきましょう。それぞれの紙面の詳細は、また改めて紹介します。

 このように、日経新聞は、独特な読み方が必要です。あなたにとって大切な記事(情報)、必要な記事(情報)が何なのかをまず考えましょう

レギュラー紙面の流れ
レギュラー紙面の流れ

1章のまとめ

キホンの読み方・まとめ
キホンの読み方・まとめ

つづく。

(注)本記事は2021年5月13日にnoteに投稿した記事を現時点(2022年4月現在)での紙面構成に変更・修正し、追記したものです。

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。