ここからは「モノ」の動きを3つの産業から読み解きます。3つの産業とは「自動車」「住宅」「観光」です。
これらの産業は、商品・サービスを支える部品や要素、業務内容が多岐にわたる業界ですから、日本政府や業界の方針が少しでも変化すると、その影響が大きく反映される業種とも言えます。そして、これらの産業が日本全体の景気を支えているのです。
3つの産業から景気指標を読む
日本では、自動車産業や住宅産業は高度経済成長期に伸び続け、お家芸とも言える分野です。また、観光産業も規模が大きく景気の影響を受けます。これらの産業は規模が大きいうえ、裾野が広いため景気に影響を与えます。
かつてはこれに加えて電気産業が日本の景気を支えてきました。花形って言うんですかね。バブル経済崩壊後は他国の安い電化製品が日本へ浸透し、電機業界の低迷が続いています。日本の電気メーカーは他の業界への参入が顕著です。たとえばパナソニック(旧松下電器、旧松下電工など)は介護事業や自動車業界、あるいは住宅産業へのシフトチェンジが目立ちます。またソニーにおいては、生損保、銀行での知名度が顕著になっていますよね。
自動車産業|景気をひっぱる実力をチェック
日本は、世界第3位の自動車市場とされています。毎月初めに、前月の販売台数が日本自動車販売協会連合会から発表されます(※1)。年間での販売台数は500万台が目安とされ、これ以上の販売があれば活況、これ以下であれば不況だと判断されます。
(※1:軽自動車は除きます)
また、電気自動車やハイブリッドカーが躍進するなか、依然として自動車の多くはガソリンを使用していることから、原油価格の変動や、自動車にまつわる税制(※2)の影響も無視できません。2016年3月には駆け込み需要により販売台数が伸びています。
(※2)
自動車取得税:2015年4月1日~2017年3月31日
自動車重量税:2015年5月1日~2017年4月30日
自動車税(軽自動車税):2015年4月1日~2016年3月31日までの新車登録車
【新車販売台数】
車種や車名、メーカー別など複数の数値が発表され、個人消費や景気のバロメーター。消費者の購買意欲や政策によって左右されやすく、裾野が非常に幅広く、時にはマーケット(株式市場)にも影響を与える。
日本国内で、新車がどれだけ販売されているかを示す指標です。個人消費、そして景気動向を確認する重要なバロメーターとなります。年間での販売台数は500万台が目安とされます。ただし、軽自動車の台数は反映されていません。ここ数年、日本での新車販売は「高級車」「ハイブリッド車(減税対象車)」「軽自動車」に3局集中傾向があります。軽自動車の減税メリットが無い中、ハイブリッド車の台数が全体を底上げしています。
住宅産業|新築住宅着工とマンション契約率
住宅産業は自動車産業と同じく、裾野が広く、動向が注目されます。日本では新設(新築)の住宅に注目が集まりますが、アメリカの場合には中古物件の動向にも注目が集まります。また、住宅投資が活発になると、それに伴って家具や家電製品の購入も増加するなど波及効果があります。
【新設住宅着工】
住宅着工の増減は、建設や建材といった関連企業や、住宅購入に伴い買い替え需要が発生する家具や家電、自動車などの消費にも多大な影響します。日本では2006年(約128万戸)をピークに減少傾向が続きましたが、ここ数年ようやく回復傾向にさしかかっています。一時期はREIT(不動産投資信託)関連が注目されましたが減退傾向にあります。2016年2月のマイナス金利が導入されてからは、住宅ローンが組みやすくなったとは言え、実際の行動に移しているのは相続対策、資産運用目的の資産家に限られています。
【マンション契約率】
首都圏、近畿圏の新築分譲マンションの契約率の動向が分かります。好況、不調の判断基準は70%が目安とされます。判断基準と同時に、どれだけの戸数が出来上がっているのか、絶対値を知っておく必要があります。
観光産業|裾野が広く影響が大きい産業のこれから
観光とひと口に言っても、宿泊、運輸、観光施設、土産物など、こちらも裾野が広い産業と言えます。日本を訪問する外国人観光客の数がビックリするほど伸びているのは、大きく報道されています。観光立国をうたって以来、着実な成果をあげているようです。
2016年に入ってからは前年比で▲(減少)です。どうやら、日本人が旅行しなくなっているようですね。
【旅行取扱状況】
国土交通省(観光庁)が主要な旅行業者50社の取扱金額を調査・集計・発表するものです。国内・海外旅行、観光・ビジネスを含む統計データです。
直近では日本人の旅行者数は減少傾向にあり、依然として外国人観光客が牽引していると言えます。総額では前年割れを起こしている状況にありますが、2020年の東京オリンピックに向けて、宿泊施設の充実(Airbnb)、移動手段の確保(Uber)、宿泊施設の環境整備(AIやIoT)などの動向に連動することが予想されます。
これも消費支出に集約
3つの産業について、業界ごとの天気予報を作ってみると面白いですよ。分かりやすいですしね。個人消費の動向(要因)をつかむには、まずは自動車産業、住宅産業、観光産業の動向をざっくりつかむようにしましょう。