投資感度を高める読み進め方 / この順番で読めばよい
投資に役立つ日経新聞の読み方についてお話ししていきます。それには、「何を読むか」ということも大切なのですが、その前に、「どう読み進めるか」も同じくらい大切ですので、その順番について説明していきます。
《株価は会社の魅力をあらわす》
株価が決まるのに、もっとも影響が大きいものは何でしょう?それは、その企業がもつ「魅力」です。「魅力」は大きく2つの要素から生み出されます。
1つは「能力」、もう1つは「財務力」です。
みんなが欲しいと思える商品をつくりだしたり、世の中が変わるようなサービスを生み出すのが会社の「能力」です。
一方で、「能力」だけあっても会社の基盤=お金の面でグラつくようだと良い会社とは言えませんね。「財務力」も当然に必要な要素です。
この両面が揃って、会社としての「魅力」(=実力や人気で人々をひきよせる)が生まれます。それが数字に反映されたものが株価だと考えましょう。
《「原因→結果」の流れをイメージする》
この「魅力」は、日経新聞を次のような読み方をすると自然とチェックすることができます。まず、ビジネス面、テック面では会社の「能力」を発見してみましょう。新しい分野への進出であったり、新しい商品の開発……といった記事だとわかりやすいでしょう。しかし、そんなに目立つことだけではありません。人材の育成や販売の方法について何かプラスになることが記事になっていないかをチェックしてください。後ほど、そんな記事が自然と目に 飛び込んでくる“とっておきの方法”をお話ししていきます。
次に、会社の魅力のもととなる「財務力」ですがこれは投資情報面で読み取ります。
次に、マーケットデータ面とマーケット総合面です。 最後に週間株式(電子版のみ)、月間株式面では1週間や1か月などの期間でどれくらいの変化があったかを確認することができます。投資ではひとつの手法として、1週間、1か月、3か月などの平均値から「ざっくりとした株価の変化」を把握することが知られています。に日の株価の変化が大きい場合には予測が難しいので、大まかに「鳥の目」を使って相場を確認するということですね。
この読み方は、「株があがった!」というときの「原因」から「結果」をたどっていく読み方です。単に株価の動きに一喜一憂するのではなく、日経新聞から「原因→結果」をたどっていくプロセスを大切にしていきましょう。
企業の「能力」を知る・儲かる3ステップキーワード
企業の能力を知るには、キーワードを探すことから始めます。そのキーワードは3つに分類することができます。順番に確認していきましょう。
ステップ1「3つの経営ING」/ ビジネスの発火点を見つける
ビジネス面、テック面は、日経新聞の真骨頂です。日経新聞では、企業担当の記者は専任の企業があるとも言われています。プライム市場(かつての東証1部に相当)に上場する企業であれば、当然に担当記者の情報収集能力は、他の新聞社とは比較になりません。それほど力を入れて作らているものを活用しないともったいないですね。
ビジネスのヒントが散りばめられた紙面で、新商品、新技術、新分野の開拓など、「えっ?あの会社が?」と思う記事がてんこ盛りです。個別の企業の情報が盛り込まれた、典型的なミクロ情報のページです。
《株価アップにつながる情報も ナナメ読みでつかめる》
自分が投資する会社のことをよく知っておくことが株で勝つためには大切です。しかし、ビジネス面、テック面にはそれこそ、数えきれないほど多くの会社の記事が載っています。これらをすべて追う、というのは現実的ではありません。すべてを追ったからといいて株で勝てるワケではありませんからね。
ではどうするか?ポイントを絞って、「株価上昇」となるキーワードを追いかければいいのです。これからその「ナナメ読み」ポイントを大きく3つにわけてお話ししていきます。
この3つです。3つのステップからそのキーワードを紹介していきます。
《3つのING|その記事(企業)はどんな経営で話題なのかメモを!》
まず、ステップ1はその名も「経営枠組み“3つのING”」です。これは、経営の手法に着目したキーワードです。1つずつ実際の記事の例を見ながらお話ししていきましょう。
3つのING❶ 提携|ネットワーキング
大まかな「ヒトとヒトの繋がり・提携」のことを指します。ある企業の不得意な分野を補うために、業務提携を結んだり、極端な例では企業買収などもネットワーキングもあたります。
業務拡大の場合には、積極的な業務提携が進みますが、採算が合わないような場合には、提携していた事業、あるいは一部を独立させることもあります。
横浜ゴム オランダATGを1300億円で買収 農業向けタイヤ参入
横浜ゴムは25日、農機や建機向けタイヤ製造のアライアンス・タイヤ・グループ(ATG、オランダ)を買収すると発表した。11億7900万ドル(約1300億円)で全株を取得する。横浜ゴムは世界8位のタイヤメータで自動車向けが中心。収益性の高い農機や建機向けを専業とするATGの買収によって事業領域を広げ、長期目標とする売上高1兆円達成に弾みをつける。
2016年3月26日朝刊
3つのING❷ 外注|アウトソーシング
アウトソーシングは外部への委託を意味します。主にヒト(雇用)コストの削減メリットがあります。
委託の対象は企業を示すこともありますが、現在は「主婦層の再雇用」「リタイア組の復活」「外国人労働者の登用」も、アウトソーシングに含めた考えたほうが良いですね。
スーパーに外国人実習生
民間食品スーパーが日本で働きながら技能を学ぶ外国人技能実習生のの受け入れを本格化させる。首都圏地盤のヤオコーは2018年度までに16年度比で約3倍の200人規模に増やす。北海道・東北に展開するアークスも現在の5倍となる100人規模とする。技能実習生の対象職種が広がったことが背景。人で不足が慢性化するなか、労働力として取り組む動きが広がる。
2016年11月12日朝刊
3つのING❸ 小型化|ダウンサイジング
業務、目的に合うように仕組みをコンパクト化、効率化、集約することです。グループ企業の統合、組織改革、AIの導入などがダウンサイジングにあたります。これらを通じて、経営のスリム化を図ります。
スリム化と言うと赤字企業の業績改善という印象が強いかもしれませんが、業績向上の意味でも大切な考え方です。これに成功した企業は、決算情報はとても明瞭です。
LIXILグループ 瀬戸社長就任3ヶ月 経営スリム化、矢継ぎ早
海外グループ会社の不正会計で揺れたLIXILグループの社長に就任した瀬戸欣哉氏が就任して15日で3ヶ月。それまでの積極的なM&A(合併・買収)路線から転換し、経営幹部の半減や、子会社売却を進める。出直しに向け、さらなる子会社売却も検討し始めた。巨大化したLIXILグループを筋肉質にする試みが続いている。
2016年9月15日朝刊
経営のキホン
経営の基本は「目的が明確であること」「役割を知ること」「責任を自覚すること」です。
起業のトップが意識しているのはもちろん、従業員ひとりひとりが経営の基本“経営理念”を把握しておくことが大切です。
この軸がブレてしまうと、いったい何をしている会社なのか、どうしたいのかが分からなくなり、経営がうまく行かなくなります。あちこちと手を出し過ぎて、破綻してしまう会社はこういうパターンです。
企業の役割・目的を知りましょう。
つづく。