夕刊には確認しておきたい項目がいくつもピンポイントで存在します。
CRB指数
アメリカの景気動向を占う代表的な指標がCRB指数です。
いくつもの商品取引所で取引されている商品合計19種類を合成した指標で、シカゴ、アトランタ、ニューヨーク市場などでの取引が多く採用されています。
建玉(たてぎょく)
商品先物取引などで「売買の約束(約定)はできているが、決済(=金銭のやりとり)をしていない状態で、取引が完了していない状態を言います。「モノは動く約束ができているが、カネが動いていない」状態です。
建玉は、相場の動きによって変化します。建玉が多いということはある程度の売り手と買い手が存在する状態ですので、人気度を測ることができます。
先物取引は、この先の相場が「・・・になるかも知れない」と予想したうえで、将来のリスクを回避するために、いま約束しておくことです。
そのため、将来の価格が
- 上がっているはず → 先物を買う(安く買う権利を売る)
- 下がっているはす → 先物を売る(高く買う権利を売る)
という行動を起こしますよね。先物が増えているのか減っているのか、によって相場を予想することができます。とくに日本での穀物やエネルギーは、外国からの輸入品によって大半をまかなっています。先物取引を行うことは日本の経済を考えるうえで重要なことです。
買ったままで決済をしていない状態を買建玉、売ったままで決済をしていない状態を売建玉といいます。例えば、1個100円のリンゴを100個売っている場合は、リンゴの売建玉を1万円分持っていることになります。
一般的に、相場の動きによって建玉の数は変わります。ある商品に対して建玉があるということは、一定の売り手と買い手がいることを指すので、人気を計る指標のひとつとなります。
建玉を持つ際には、「先物取引の対象になっている指数が、期日にどうなっているか」を予想します。基本的には、以下の2つをおさえます。
- 上がっていると予想すれば、先物を買う
- 下がっていると予想すれば、先物を売る
このような取引を行っていきます。ちなみに、建玉は取引単位ごとに「1枚、2枚・・・」と数えます。
【実践編①】転売・買戻し
建玉は、契約期日までに、以下の方法で決済することができます。
■転売
自分が買った建玉(買建玉)を第三者に売る(転売する)こと。安く買い高く売れば利益が出る。
転売した価格10,000円-買い建てた価格9500円=差額500円
転売の例
差額500円×取引単位1000倍=500,000円の利益
■買戻し
自分が売った建玉(売建玉)を第三者から買い戻すこと。高く売り安く買い戻すと利益が出る。
売りたてた価格12,000円-買い戻した価格11,000円=差額1,000円
買い戻しの例
差額1000円×取引単位1000倍=1,000,000円の利益
転売・買戻しをする価格は、改めて第三者との間で約定した価格になります。その差額が、決済の損益です。また、実際には取引単位が関わってきます。
【実践編②】SQ決済
取引期日までに転売・買戻しで決済されない建玉もあります。
それらはSQ決済という方法で、まとめて最終決済をしています。SQ(Special Quotation)値とは特別清算指数という意味です。特別な指数を使って期日がくると自動的に一斉決済されます。
利益が出るしくみは、転売・買戻しと同じです。SQ値(期日の指数)より安く買い立てできれば利益になります。また、SQ値より高く売れる建玉であれば利益になります。
VIX指数|投資家の恐怖心理を表す恐怖指数
VIX指数(Volatility IndeX;ボラティリティ・インデックス)とよばれる指数があります。これは、簡単に説明するとアメリカ株の先物取引の値動きを参考にした「これから相場がどのくらい動くか」という予想をポイント化したものです。こう聞くととても複雑な感じを受けますし、実際これを算出するための数式などはとても手に負えるものではないくらい難しいのですが、理屈を知れば簡単です。
ボラティリティ
VIX指数を理解会するためには、まず「ボラティリティ」という言葉を知る必要があります。これは、「株式変動率」のことで、株価の値動きの幅が大きく、激しいほど数値が高くなります。
100円の株が10日後に600円になった2つの株があったとして、
・A株 毎日100円ずつ上がる
・B株 毎日大きく値動きして600円に届く
B株のほうが「ボラティリティが高い」株となります。
VIX指数は、ボラティリティの見える化
株の先物取引は、「●ヵ月後のこの株を●円で買ってください」とか「▲円で売ります」という約束がやり取りされています。このボラティリティを「見える化」したものがVIX指数です。VIX指数が高いほど投資家が「大きく相場が動くのではないか」と相場の先行きを不安視しているとされます。
VIX指数
シカゴ・オプション取引所がS&P500を対象とするオプション取引(先物取引の権利の売り買い)の値動きから算出されます。
指数の数値が1ヶ月先の変動率を考えた場合、10~20程度が正常値されますが、何らかの売り気配や急騰の気配があるときには30を超え、市場が混乱しているときには40を超えます。このようなことから、投資家の心理を表す恐怖指数と呼ばれています。以下に示すように、大きな事件があったときには30を超えるどころか80を超える場面もありました。
- 2003年3月 イラク侵攻 34
- 2001年9月 同時多発テロ 49
- 2008年10月 リーマンショック 89
- 2011年10月 ギリシャ通貨危機 46
- 2015年8月 中国景気減速懸念 53
- 2020年3月 コロナショック 85
日経平均VI
日本株の場合は、日経ボラティリティインデックス(日経VI)が2010年11月から算出されています。日経VIは、大阪先物取引での日経先物オプション価格等から算出されます。日経平均株価がこの先1か月でどれくらい変動するかを推定したものです。VIX指数と同様に、株価の先行きの見通しに不透明感があるときには数値が大きくなります。
日経平均VIは通常20~27程度の範囲で推移していますが、日経平均が大きく下落する際に数値が大きくなる傾向があります。
- 2008年10月 リーマンショック 92
- 2011年3月 東日本大震災 69
具体的な予想変動率
VIX指数や日経VIは、1年間での変動率を%で表しています。つまり指数が20である場合、1年間での予想変動率は20%ということです。恐怖指数は1か月後を想定しているので、正確な解釈としては、
変動率予想変動範囲(%) = VIX÷√12
と表すことができ、20÷√12≒5.8%の変動が予想されます。日経平均VI先物などの投資を行っている場合に、誤って理解していると大損する可能性があるので注意が必要です。
さらに、興味があれば
ユーロ市場にも恐怖指数があり、VSTOXXと言います。欧州の代表的な株価指数EURO STOXX 50のオプション取引のボラティリティーから算出される指数です。
そして、恐怖指数が株式相場の逆相関関係から、VIX指数への投資を、投資・資産運用のリスクヘッジとして利用することも可能です。(株価下落時に、VIX指数に投資していれば、VIX指数上昇分の利益がでる可能性がある。)日本でもVIX指数に投資できるようになりました。
国際投信投資顧問が運用しているETF「国際のETF VIX短期先物指数」です。このETFはS&P500の VIX指数に連動します。中期先物をベンチマークとする、「国際のETF VIX中期先物指数」もあります。
日経VIにも投資ができます。「NEXT NOTES日経平均VI先物指数ETN」です。投資家の心理を売買できるなんてどういうことなん?って思う場合はもうしばらく勉強してから乗り出しましょう!
【注意!】
心理を売り買いするもの独特の値動きがあります。
・市場暴落時には指数が上昇しますが、市場の動きが安定すると指数は急落するということ。 ・限月(満期までの期間)が遠いものほど高く、投資期間が長くなるほど下落するということ。