レギュラー紙面のうち、必ず読んでおきたページを紹介します。総合面、政治・外交面、経済・政策面、オピニオン面、そして金融経済面です。それぞれ、ビジネスパーソンの基本知識である
- 政治で何が決まっているのか
- 諸外国とは、どんな話が決まっているのか
- 日本経済をどのようにすべきなのか
といった日本の大きな動きを知ることができます。この動きを知るために、日本全体を俯瞰することから始めましょう。
総合面|長い記事=解説という読み物
日経新聞が「この記事は細かいとことまで知ってほしい!」と思っている情報ばかり並びます。ですので、1つひとつの記事が長くなります。記事が長い分、総合面では掲載される記事数は少なくなります。
基本的な読み方としては、やはりトップ記事の前文をチェックすることが第一です。また、なかでも<社説>や特集記事である<真相深層><迫真>は必読です。
《総合面には4つの柱がある》
総合面には多くのコーナーがあるので、その読み方も自分なりのスタイルをもつと効率的に読むことができます。<社説><真相深層><迫真>はゆっくり時間をかけて読みましょう。そして、<きょうのことば>が知らない言葉の場合には、必ず覚えておきたいですね。
<社説>
日本経済新聞社の意見です。政治、国際、社会的なできごとを経済という切り口で分析し、見解が述べられています。
<迫真>
会話が中心で進むルポルタージュ形式の記事。ドラマ仕立てでグイグイ読ませます。古いニュースが掲載されることもあります。『あのとき実は……』のような内容になることもあります。
- 当時、掲載するスペースが無かった
- 今だから言える内容
理由はさまざまですが、歴史の教科書を追うような感覚で読んでみるのも良いですね。これまで、私の印象が強かった記事について紹介します。
北海道新幹線開業
従来の新幹線に比べて積雪への対策が必要なこと、青函トンネル内のみならず貨物列車とすれ違うこととの多い路線での風圧対策、そしてJR北海道が抱える「メンテナンス」に関する諸事情など、開通に向けてピリピリしたムードが漂った2016年の年明けから話が始まります。
北海道南部や、青森県北部の「消滅可能性都市」とされる地域は新幹線への期待が大きい反面、大都市札幌では、函館までの開通は「どこ吹く風」状態。オリンピック招致に意気込む札幌市、札幌市民としては、(札幌までの延伸が予定されている)2031年まで、15年も待つことができない!というのと正直な意見です。「まず新青森―新函館北斗間の運営を軌道に乗せることが最優先事項」(国土交通省幹部)とする政府与党の見解は、いつものこと。大都市札幌は、霞が関から遠すぎます。
2016年3月23日
幻のSTAP細胞
生物学の常識を覆す「夢の細胞」として登場したSTAP細胞。その顛末はみなさん知っているように「幻」となりました。
日本を代表する研究機関である理研の若手研究者が作った!と封が切られましたが「すごい研究成果をもうすぐ発表します」と興奮気味だった関係者の動向も見逃せませんでした。翌日からは「金のなる木」と揶揄され、特許が成立すれば、再生医療再生医療銘柄で株価が急騰するなど、マーケットも即座に反応しました。
2014年6月23日
<真相深層>
毎日掲載があるわけではありません。かなり詳細なことが書かれています。<迫真>が会話中心の物語形式が多いのに対して、<真相深層>では裏付けに基づいた情報提供や、日経独自の見解が含まれていることもあるので、読み方(事実なのか意見なのか、場合にはよっては推測なのか)を確認しながら読みましょう。
<きょうのことば>
<きょうのことば>では、その日の記事のうち日経新聞社が読者に対していちばん大切だと思うキーワードを紹介しているので、分からない言葉のときには必ず読むようにしましょう。最近だと「年金制度改革」「マイナンバー」「新型コロナ」「ワクチン」「オリンピック」とか多いですね。最低限知っておきたい言葉ですから、”知らない”なんてことのないように。
政治・外交面|要人の動きで俯瞰
政治・外交面は、定点観測が必要な「ヒトの動き」のページです。首相や大臣を中心とした国会議員、あるいは役人がどんなところで、どんな話をしているのかを推測することができます。※2021年5月10日の紙面刷新により、政治面から経済・政策外交面と改称されました。
私たちの暮らしや、企業などの活動についてのルールを決めているのは政府や日本銀行です。そのため、経済を知ろうと思えば、必然的に政治や外交の情報も必要になります。日本政府はどうしようとしているのか、世界各国と比べてどのように相違点があるのかなど、今後の方針を決める根拠となる材料が散りばめられていると言えるページです。
《トップ以外にも要人の動きをチェックする》
日本の政治家の代表といえば、首相ですが、実は首相が出席する場というのは「何かを決定する場」であることは少ないです。というのは、「首相は何かが本決まりの場へ顔を出してハンコを押すのが仕事」と考えると、首相がいる場というのは、「すでに結論がでた」段階にあるといえます。
一方、財務大臣や外務大臣など、要人の動きは確認しておきたいですね!その場で何かを決めよう!としているわけですから。中でも、アジアの要人の動きはチェックしておきましょう。
《要人って、いったい誰なのでしょうか》
そのときの議題によって変わる、と言っても良いかもしれません。日本国内であれば総務大臣、経済のことなら財務大臣、外交のことなら外務大臣、防衛のことなら防衛大臣とったように主要な閣僚(大臣)を言うのが通例です。
対外的には、副総理(現在は財務大臣などが担当していることが多いです)ということになりますし、事務方とすれば事務次官や○○局長などがあたります。
また、国家元首として国王が存在する場合には、政府の長である首相や、場合によっては国務大臣などが要人として表されます。
《もちろん総理大臣の動きもチェックする》
<首相官邸>は必ず確認が必要です。首相が誰と会っているのか、たとえば国内の政治家に会っているなら政治・外交面、財界人に会っているなら経済・政策面、外国の要人に会っていれば政治・外交面や国際・アジア面も併せて読んでおきましょう。
《チェックしたい会議》
あまり興味が無くても、少しずつ「自分にとって重要なこと」が話し合われる会議はチェックしておきたいですね。
《知っておきたいマメ知識|ベタ記事「短信」》
各ページ、ところどころに上のような付箋を貼ったようなマークがありますよね。この記号がついている記事って、ちょっと文字が“ぎゅうぎゅう”になっていることに気づきませんか?
この記事をベタ記事って言います。電信版の場合には「短信」として掲載されています。
新聞の原稿締切直前、限られたスペース内に「うーん・・・放り込むか。」と判断した記事(ベタ記事)を挿入します。記事というのは大切なことから記載しています。つまり、記事の後ろのほうは、どうでも良い情報なわけです。そこで、どうでも良い情報を切り捨てて新しい記事(ベタ記事)を貼り付けます。
ベタ記事は、原稿締切時刻直前に“どうしても伝えておきたい”と思った記事なので、大切な情報です。ときに “将来大きなことになる”風が吹く記事”とも言われています。ベタ記事はあちこちにあるので、まとめて読んでみると面白いですよ。
経済・政策面|モノ・カネを俯瞰
政治・外交面がヒトの動きであるのに対して、経済・政策面は世の中のモノとカネの動きです。
政治・外交面で政治家の動向、政策の中身を確認したうえで、結果が「●●経済連合会」や「経済●●会議」など、どういった場で確認・決定されているかをチェックできます。
《経済・政策面は日経新聞の花形》
経済・政策面を担当する経済部は、日経新聞の中でも花形の主力部門です。日本銀行、各銀行、経済団体、保険業界、関係省庁に関する決定事項が掲載記事の中心です。みなさんの仕事に関する記事はしっかり読んでおきましょう。
《景気指標、経済指標に関するニュースもチェック》
日々の夕刊では、海外の景気・経済指標が発表されますが、とくに大切な指標については、経済・政策面で解説や今度の動向を分析しています。気になる指標は、発表される日程をあらかじめチェックしておけば経済感度、投資感度を鍛えることができます。
《もっとも大切な会議、動きがFOMC》
アメリカの日銀にあたる組織をFRBと言います。そしてFRBの方針を決めるための会議のこをFOMCと言います(詳しいことは改めて触れます)。経済・政策面では、FOMCの最終日翌日に、どのようなことが話し合われ、決まったのかを掲載しています。また、あらかじめFOMCでの議題になりそうな内容は、ベージュブックという報告書で確認でき、夕刊に掲載されます。
アメリカ経済は、日本への影響が大きいので、投資家としてだけではなく個人レベルでも知っておきたい情報が満載です。アメリカの金利(預金や住宅ローン)、物価(個人消費との関係)、雇用環境など、日本との差を知っておくことは”魅力の違い”として、為替レートにも大きな影響があります。
オピニオン面|目的に合った専門家の意見を
オピニオン面は、目的に合った曜日に読みましょう。あなたの意見が専門家とどう異なるのか、なぜ異なるのか考えることが大切ですね。
フィナンシャルタイムズ やエコノミスト誌など、海外発信の記事も確認できます。”海外からみた日本”を知ることで、日本に住む人が考える日本経済とは、大きく違った視点を得ることができます。
また、各編集委員の得意分野を知っておくと、あなたが読みたいのか、興味ないのか…判断できますね。経済番組へ出演している論説委員も多いので、興味がある話は新聞だけでなくテレビで知ることも大切な情報源と言えます。
金融経済面|”新しいカネ”で賢い消費・投資活動を
新しい『お金のしくみ』が分かります。
- 銀行のこと、保険のこと、投資信託のこと。
- 日銀のこと、金融庁のこと。
私たちを取り巻く、あらゆる『新しいお金の世界』を知ることができます。最近は、仮想通貨(暗号資産)や、金融機関のトラブル対策のこと、日銀や金融庁が決めたことなど、身近な話題が多いので、各記事のタイトルくらいはチェックしておくと良いでしょう。
また、過去のトラブルがどうなったのか、今後大きな話題となりそうなルール変更など、興味深いテーマは長期にわたって連載されています。電子版を利用して、過去から連載を追ってみるとさらに知識が深まります。
保険会社、銀行、証券会社などのお勤めの方は必読ページです。
まとめ
日本を俯瞰するには以下のページが役に立ちます。
- 総合面 読み物
- 政治・外交面 要人の動き
- 経済・政策面 モノ・カネの動き
- オピニオン面 専門家の意見、海外からみた日本
- 金融経済面 新しいカネ
つづく。
(注)本記事は2021年6月2日にnoteに投稿した記事を現時点(2022年5月現在)での紙面構成に変更・修正し、追記したものです。