ここまで見てきたのは各企業の情報ですが、その後は市場の環境をチェックしていきます。まずは、マーケットデータ面、そしてマーケット総合面です。これらのページは、企業の能力(ビジネス面、テック面、会社人事面)→企業の能力(投資情報面)と見てきた流れを活かす方法をおさえておきましょう。個別の株価など細かい数字を追うのではなく、まずはマーケット全体がどのような動きなのかを読み取ることを意識します。
マーケットデータ面|大切なキーワードの山
市場体温計で加熱度を見る
マーケットデータ面の上段には、<市場体温計>と区切られた部分があります。4つの市場「株式」「為替」「金利」「商品」を代表する指標を一覧にしています。
それぞれの市場が、どれくらい加熱しているのかを知る第一歩と言える指標です。すべての市場が同時に加熱することはほとんどなく、冷めている市場を見つけることや、これから加熱しそうな市場を探すことが投資のキホンです。
とくに左端にある指標は、毎日のようにニュースで耳にする言葉ばかりです。ビジネスパーソンの会話によく出てくる、基本ワードです。
商品には、金、原油など、ビジネスの場面だけでなく生活面でも大切なキーワードが並びます。金は宝飾品としても工業製品にも使われる材料として貴重なものです。原油は、食品に使われるほかエネルギー源として欠かせないものです。
株式に関する多くの指標がありますが、自分が保有している銘柄、興味のある銘柄がどの指標に反映されるのか、逆に、どの指標の影響を受けるのか知ることから始めましょう。(詳しくは後記)
株式市場全体の「お得度」=平均点を知る
市場体温計の右端には◇投資指標があります。これは株式市場全体での“儲け”や“お得度”が分かります。投資家にとっては、運用成績の平均点が分かるということです。
儲けは“配当利回り”で確認する。平均配当利回りと所有銘柄を比較する。
6つの指標が出ていますが、そのいちばん下に株式益回りがあります。これは東証プライム全銘柄の平均で「これだけの分配能力がある」ことを意味しています。
「●%(予想)■%(前期基準)」とあるのは、
- いま投資すると●%の利益を生み出すと予想されます
- 前期購入した人は■%の利益を生み出しています
と読み取れます。
また、日経平均採用銘柄の配当利回り(単純平均)は「●%(予想;太字)■%(前期基準;細字)」とありますので、投資家が受け取った配当をみた場合の予想と実績が示されています。
【メモ】株式での儲けは2種類
- 株式益回り=税引後利益÷時価総額
- 配当利回り=配当金÷投資額(株価)
株式益回りは、投資家から集めた資金総額(時価総額=株価×発行済株式総数)でどれだけの利益を生み出したかという、企業の能力を示したものです。一方、配当利回りは利益から投資家へ配分した配当金を株価で割ったもので、投資家から見た投資効率です。
PERは“お得度”を表す。比較方法に注意。
PERは「株価収益率」と呼ばれ、企業の株価と利益の関係を表しています。普通、PERが低いほど「割安株」として注目されます。PERが低いということは、会社の利益に対して株が安く買えるということだからです。
一般に「14」を超えると「割高」、下回ると「割安」の株と言われます。PERは、下の式によって求めることができます。
PER=時価総額÷純利益=株価÷一株あたりの純利益
PERの計算式
※時価総額=株価×発行済株式総数
実はこのPERを逆数(分母と分子を入れ替えること)は、株式益回りを表します。
PERが低い = 割安 = これほどの利益があるのに株価が安い = 益回りが高い
ということですね。
<投資指標>では、「日経平均採用銘柄」「JPX日経400採用銘柄」「東証プライム全銘柄」「東証スタンダード全銘柄」「東証グロース全銘柄」のPERが掲載されているので、それぞの市場の相場を知っておきましょう。
手持ちの銘柄が割安なのか、割高なのか、対象市場の平均と比較することには価値がありません。それは、PERは業種によって傾向があるからです。PERは、同じ業種の銘柄どうしで比較してください。電子版の個別銘柄の株価情報や<週間株式>で調べることができます。
- 高PERの業種 非鉄金属、鉄鋼、鉱業、電気機器、食料品
- 低PERの業種 銀行業、建設業、電気ガス業、ゴム製品
PBRは売買の目安=ときに損切りライン、ときに買い時期をあらわす
続いては、PERの隣にあるPBRです。PBRは「株価純資産倍率」と呼ばれる数値で、会社の株価と純資産の関係を表しています。一般にPBRが低いほど企業の株主資本(純資産)に対して株価が割安とされます。
もし会社が解散するとなった場合、支払い義務のある費用を全て支払った残りの資金を全て株主へ配分することになります。
PBR=株価÷1株あたり株主資本
PRBの計算式
※1株あたりの株主資本(BPS)=株主資本÷発行済み株式数
PBRは「1倍」が基準です。理論上、PBRが1倍を下回ることはありませんが、実在します。このような会社は割安性が非常に高いです。このような企業が解散するとどうなるでしょうか。PBRが1ということは「株価=1株当たりの純資産」ですから、投資金額が1株あたりの解散価値と一致しています。
会社が解散した場合、投資した金額がそのまま戻ってきますね。もしPBRが1を下回るようなことがあれば、経営不安の場合は別として、割安と評価されて投資価値が相対的 に高まり、PBRが1を下値に株価が回復するケースが多くあります。
このようにPBRは財務面からみた投資尺度ともいますね。PBRは、電子版で個別銘柄の株価情報で確認することができます。
まずは「割安」「割高」の調査から
毎日変動する株価は必ずしもPERやPBR通り理論的に決まることはありません。だから、「割安株」や「割高株」ということが起こります。投資を始めるときには、このように割安か、割高かを調べることが始めることをおススメします。
さて話を戻しますね。配当利回り、PER、PBRについて「お買い得株」「割高株」の判断基準がわかりました。次からは、あなたが保有している、あるいはこれから購入したいと考えている株式について調べましょう!
5つの市場
市場体温計より下の部分は、金融市場を構成する5つの市場についてのデータが並びます。それぞれの概要だけでも知っておくと、自分にとって必要な情報をすぐに探し出せるようになります。
株式市場
景気の良し悪しを判断する最も有名な市場です。東京市場で現在取引されている銘柄の平均値や、将来取引する際の価格設定に利用される「先物」「信用取引」「オプション」などの取引状況も確認できます。
債券市場
借金の証明書(借用証書)を取引する市場です。日本(国)が発行する債券(国債)のうち、10年満期設定の”新発10年国債”の利回りが最も重要な指標です。それ以外の年数の債券や、株式会社が発行する債券(=社債)などの取引状況が分かります。
短期金融市場
金融機関同士で資金をしあう市場です。1日限りの貸し借りの際に設定される“無担保コール翌日物”という金利が最も有名です。あらゆる金利の基準となり、日銀が注視している指標のひとつです。その他の期間設定をしている場合の金利や、日銀が行っている取引なども知ることができます。
為替市場
日本円を外国の通貨と交換する市場です。米ドルやユーロ以外にも、主要通貨の取引価格が分かります。私たち個人が銀行で両替するときの相場の基準となる数値も知ることができます。さらに、株式市場と同様「先物」の相場が分かるので、多額の外貨が必要なときにはタイミングを考えるきっかけにもなります。
商品市場
穀物や金属類など、企業にとっては大切な“モノ”が取引されている市場です。将来の仕入価格「先物」が最も大切な情報です。日経新聞が得意とする分野のひとつで、私たちの将来の暮らしに大きく影響する情報源です。
マーケット総合面|データの分析
マーケットデータ面が指標の一覧であるのに対し、マーケット総合面はデータを分析し、先読みに役立つ情報が得られるページです。
マーケット総合面では、シリーズ化された各コラムが意見の記事で、それ以外が事実という構成です。事実であれば、必要に応じて覚えておきましょう。意見であれば専門家と自分の意見を対比しながら、投資活動に役立つでしょう。とくに大機小機は人気のコラムです。
事実と意見を区別しながら読み進めないと、誤った情報を覚えることになり、期待はずれの投資成果になってしまいます。