これまで見てきたように、アメリカに限らず、個人レベルの消費はどの国でもGDPの寄与度の大きな割合を占めています。私たちがモノを買うことが契機にもっとも影響を与えるのです。
一生懸命働くようになると
企業の経済活動が活発になると、従業員の働く時間が長くなり、それにともない給料がアップします。これらが指標でも確認できるようになると、いよいよ景気が良くなってきた!と実感できます。
経済指標ダッシュボードでは、大変見やすく<消費><労働>のそれぞれに「ヒト」に関係する各指標がまとまっています。まずは<労働>の代表的な指標を2つ見てみましょう。
【現金給与総額】
所得税、社会保険料、組合費、購買代金等を差し引く以前の総額。
所得税、社会保険料などを差引く前の総額で、「あなたにはトータルで、コレだけのお金(人件費)を支払っていますよ」という金額です。
月給(基本給)、残業代、賞与などが含まれます。「どれだけ給料を受け取っているのか」は、消費者心理を大きく左右します。同時に、景気の良し悪しが実感できるかの重要な判断指標とも言えます。
【所定外労働時間】
就業規則で定められた時間を超えて勤務した時間。
就業規則で定められた時間を越えて勤務した時間のことです。景気が良かったり、これから良くなると予想されたりするときには、残業してでも生産などの業務に追われます。
今後、景気の回復が見込まれる時期には「企業業績」の回復が見込まれたり、残業したりすることで収入が増えるため、景気に連動するとされます。
もっと働くようになると
さらに今後も利益が上向きだと判断すると、企業は社員を増やすため、求人数が増えることにつながります。有効求人倍率は大きくなり、完全失業率は低水準が続きます。
【有効求人倍率】
求職者に対して、企業が求めている人材(求人数)が何倍なのかを示す。
求職者(仕事を探しているひと)に対して、求人数(企業が求めている人材)が何倍かを示す指標です。倍率が高いほど「企業が人材を求めている」ので、企業業績の向上が見込まれる状況を意味しています。ただし、求職者には「フリーター」「ニート」は含まれません。それは、仕事を探していないからです。
そのため、景気がよくなって、それらを反映した求職者が増えることにより有効求人倍率が低下することもあるので注意が必要です。雇用者に関する情報は厚生労働省(有効求人倍率)、総務省(完全失業率)が発表されるので、時間のあるときに内訳を確認しておく必要がありますよね。
【完全失業者】
労働人口に対して、失業者がどれだけいるかを示す。
求職者が失業者に該当するため、積極的に職探しをしていない者は求職者にも失業者にもならならい”隠れ失業者”が相当数いる。労働人口(15歳以上;学生を除く)に対して、失業者がどれだけいるのかを示す指標です。積極的に職探しをしていない者は失業者には含まれませんから、隠れ失業者が相当数いることに注意が必要ですよね。
日本は、失業者のみならず、生活困窮者に対する手当が充実しているので、失業状態から(抜け出したくても)抜け出さないほうが良いと考える人が多くなっていることも、知っておきたいところです。
このように「ヒト」に関するデータは身近なうえに、わかりやすい数字ばかりですのでイメージしやすいです。
財布のヒモがゆるむのは? 最後
景気が良い、というのは指標から給与水準が高く、企業に活気がある状態ということが分かりました。そういった状況で私たちも「何か買おう!」という気持ちにつながります。
それにより、消費支出が伸びていくのです。消費支出はGDPの内訳でもっとも高い割合を占める「個人レベルの消費」を表します。
【消費支出】
2人以上の世帯が消費にどれくらいお金を使っているか、前年比が掲載されています。税金や社会保険料は非消費支出といって別のくくりですから、みなさんが実際に使っていると実感する「生活費」って考えてもOKです。日本では、企業や政府の消費よりも、わたしたち個人の消費が圧倒的なシェアを占めています。