[30]企業が作るモノ情報|ヒト・カネが動きだすきっかけは”生産”

日経新聞の読み方

 企業が行う「生産」は表裏一体の関係にあります。企業が何を基準に景気の良し悪しを判断しているのかがわかれば、経済の流れがぐっと身近になります。

企業の活動・状況情報
( まとめ ▶ 企業の活動・状況情報 )

最も信頼性のある指標はTANKAN

 GDPと並んで日本のいまを象徴するのが日銀短観です。日本銀行が企業の代表(社長)に実施するアンケート調査で、景気に3か月先行する指数とされています。

 日銀短観(TANKAN)は“日本で最も信頼性のある指標”とされ、景気にきっちり3ヶ月先行しています。企業の代表は、この日銀短観および自社の業績から、たとえば製造業であれば「この先どうしようか・・・モノを作ろうか、しばらくやめておこうか」という判断をします。

【日銀短観】

 正式名称「全国企業短期経済観測調査」。全国の約1万社の企業を対象に四半期ごとに実施。

 企業が自社の業況や経済環境の現況や先行きについてどうみているか、などの項目のほか、売上高や収益、設備投資額といった事業計画の実績・予測値など企業活動全般にわたる項目について調べています。

 業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値が発表されます。

 もし、日銀短観などによって先の見通しが明るければ、機械メーカーなどは企業からの注文を受けることになります。企業の景気回復の兆しは、まずはじめに機械受注として指標に表れてきます。この機械受注は景気に6~9ヵ月先んじた傾向を示すとされます。それくらいの余裕をもっておかないと生産設備は稼働準備ができないと考えても良いですね。

【機械受注】

 機械メーカーが受注した設備投資用の機械の受注額を集計したもの。設備投資よりも6~9カ月程度の先行性を持つ。船舶・電力の受注は、景気局面とは無関係に不規則な動きをとることが多く、”船舶・電力を除く民需”ベースの数字を重要視。

 調査対象となっている企業280社が受注した設備用機械類の受注状況の金額です。

生産状況を見る生産指数

 受注があると生産にとりかかります。反対にこれからの流れが不透明なら製品在庫を確認したうえで生産調整(生産を減らす)に入ります。企業の生産体制は、残業時間や勤務体制に反映されます。ヒトが動くきっかけは、このようにモノが動くことから始まることが多いのです。

【生産指数】

 企業における生産の状況。鉱工業生産活動の水準の推移を把握する。 企業における生産の状況を示します。鉱工業生産活動の水準を把握することが大切です。

 日銀短観の影響が反映される指標で、「これから景気がよくなる」と判断すれば生産指数は伸びますし、「改善が見込まれない」と判断すると生産調整に入ります。

 「いま売れか」ではなく、「この先売れるか」を判断する材料なので、景気動向の先行指数として採用されています。

【製品在庫】

 生産者が保有する製品在庫と出荷の比で表した動向。生産者製品在庫指数÷生産者出荷指数。生産者が保有する生産在庫と出荷の比表した指標です。生産者製品在庫指数÷生産者出荷指数。倉庫に保有する製品在庫からどれだけ出荷されたかを示しますので、その製品の製造状況と売れ行きを知ることができます。

 売れ行き以上に生産していれば在庫は増加するので、在庫の増加はあまり良い傾向とは言えません。しかし、今後の売れ行きを見込んで増産しているのであれば、在庫の増加は良い要因です。

 生産・在庫・出荷のバランスを把握することが大切なんですよね。目安として110%で生産過剰、130%を超えると極度の在庫超過と判断されます。

企業の成績

 雇う側の視点で景気の上昇はどのような道順をたどるでしょうか?まず、企業の具体的な成績は営業利益の水準で確認できます。そして、着実に利益を出す企業が増えるようになると、企業倒産件数が減っていきます。

【全産業営業利益】

 「売上高」や「経常利益」など、本来の事業活動による企業収益の動向。

 営業利益は、売上総利益から販売費、一般管理費を引いたものです。どれだけモノに魅力があるのか、そのためのコストがどれだけあるのかを知ることができます。その企業が、本来の事業活動での「稼ぐ力」を示していますから、今後の成績を大きく左右する指標と言えます。

【企業倒産件数】

 全国・負債総額1千万円以上の全国企業倒産状況。放漫・連鎖・過小資本など倒産の原因を知る必要もある。

 企業が倒産する原因には「放漫経営」「取引先からの連鎖倒産」「過小資本」などがあります。倒産件数は、どれだけ景気が悪化しているのかを知る指標となりますが、その原因を知ることの方が大切です。

企業活動の成果が設備投資

 企業業績が良好であれば、さらなる売り上げに向けた準備が始まります。その象徴と言えるのが設備投資です。

【設備投資】

 法人企業統計のひとつ。財務省が金融・保険業を除く営利法人の財務状況について調査した統計で、企業活動の実態の把握に用いられる。ソフトウェアを含むベースと除くベースの動向をみることができる。

 企業が機械・工場などの固定資産へ投資した金額です。

 より売上を増強するため、合理的な経営をすすめるために機械、装置、設備等を購入する行為のことを指しますが、とくに新商品に向けた機械・設備投資へ注目が集まります。設備を導入することで作業効率が改善されるだけでなく、人件費などの削減もできますから、企業業績への影響が大きくなりますよね。

つづく。

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。