[03]日経新聞の1面で俯瞰

日経新聞の読み方

海外・日本経済| マクロ経済を概観する

 マクロからミクロ、川上から川下までお金の流れを俯瞰する方法について考えます。

 日経新聞に載っている記事は、大きく2つに分けることができます。

 1つは、日本を含めた世界全体の経済です。国レベルの政治、それによってもたらされる経済について大きな視点で記事が書かれます。もう1つは、個別の企業や家庭・個人のお金の流れについてです。世界の景気が良くても個人レベルではお金持ちになれない、という例はたくさんありますよね。

 最初の国レベルのお金の流れをマクロ経済、もう1つの企業や家庭、個人レベルのお金の流れをミクロ経済と呼びます。

《日経新聞の前半は マクロ視点で経済のページ》

 経済・政策面(※)、国際・アジア面(※)、マーケット総合面グローバル市場面の各面はマクロ経済について書かれています。これらは新聞の前半分にかたまっています。ですから、1面から読み進めて、10面くらいまでを眺めれば、「マクロ経済の現在」の概要をつかむことができます。

※2021年5月10日より名称変更されました。

 それから後ろは、ミクロ経済の記事です。つまり、日経新聞は前から読み進めると自然に川上情報→川下情報がつかめるようになっているのです。

《大きな動きを「鳥の目」で読み取る》

俯瞰する目
俯瞰する目

 なにごともそうですが、概要をつかんでから個別のものごとを見た方がわかりやすいですね。日経新聞は、ページをめくるごとに記事の対象が狭くなっていきます。

 これらの面は「鳥の目」をもって読むところです。鳥の目とは、鳥が空から地上の獲物をさがすように広い目で見ることです。

 新聞に載っているすべての記事を読むことはムリ。ですから、自分にとって大切な記事をつながりを意識しながら読んでいきましょう。そのためには、紙面のどこに・どんなことが書いてあるのかを知っておく必要があるので、これからお話ししていきます。

状況報告と数値報告|記事のスタイルの違いを知る

 日経新聞にはマクロ経済という大きな情報と、ミクロ経済についての個別の情報との2つが載りますよ、とお伝えしました。実は、この2つでは記事のスタイルが異なっています。

マクロ経済、ミクロ経済
マクロ経済、ミクロ経済

《違いを知れば読むスピードが違う》

・マクロ経済では状況情報(〜に向かう、〜の傾向がある)を表現する
・ミクロ経済では数値情報(**年、**円、**%増)を表現する

 この違いを意識すると格段に読むスピード・理解するスピードがアップします。

 どこからどのような情報を得るか、目的を明確にした上で紙面を開くと効率的な読み方ができるようになりますね。

 たとえば、株式投資をするのに国際面経済・政策面などが気になる人もいると思います。もちろん、日本を取り巻く環境がどのように変化するのかのマクロ情報も大切ですが、やはりビジネス面テック面投資情報面で、ミクロ経済を確認するほうが効率的ですし、大切ですよね。あらためて詳しく触れますが、株価は、企業の能力(ビジネス面テック面)や、財務力(投資情報面掲に載)の影響を大きく受けます。具体的な数値が大切なんですよね。

「状況情報」の例

イスラム圏7カ国の市民らの入国を一時禁じた米大統領令は、司法判断で効力を失った状態が続くことになった。三権分立により権力の独走にとりあえず歯止めがかかったが、トランプ大統領は入国制限の復活に執着し、最高裁に上訴して徹底抗戦する構えをみせる。混乱の火種は残る

2017年2月11日 朝刊 総合2面

「数値情報」の例

ライオンの業績が好調だ。2016年12月期連結決算は純利益が前の期比49%増の159億円で、03年12月期以来13年ぶりの最高益だった。歯ブラシなど得意分野に経営資源を集中し、シニア層を中心に健康志向を取り込んだ。株価は10日、上場来高値を付け市場の期待も大きい。かつて業績低迷で「眠れる獅子」といわれた姿はすでに様変わりしている。

2017年2月11日 朝刊 投資情報1面

経済と景気|鳥の目で読む日経新聞

経済とは、景気とは
経済とは、景気とは

経済とは、私たちが

  • どれだけの時間働いているのか
  • どれだけの商品が売れているのか
  • どれだけのお金が世の中で動いているのか

など、ヒト、モノ、カネの活動のことをいいます。この3つの動きが「あるのか」「ないのか」が経済です。

一方、景気とは

  • 私たちが、忙しいと思っているのか、ヒマなのか。
  • 作ったモノが売れているのか、売れていないのか、それとも作る気にならないのか。
  • お金を使いたいのか、使いたくないのか。

など、ヒト、モノ、カネの活動状況またはその情報です。

1面|最も伝えたい記事が並ぶ

 1面は多くの記者が持ち寄る記事(約1,000記事)から勝ち抜いたものが並ぶので、毎日必ず前文までチェックしましょう。

《毎日確認しよう!❶おいしい情報》

 トップ記事には5つの構成があることは触れた通りで、大切なのは“前文”でしたね。毎日、興味がなかったとしても前文は必ず読みましょう。とは言っても、日経新聞の記者は読者の興味をそそるように、あれやこれやと考えています。その成果が、“主見出し”や“袖見出し”です。

 日本経済新聞には約1,500人の記者がいます。そのうち経済担当の記者は1,000人で、トップ記事を書くことのできるベテラン記者は200人ほどです。このベテラン記者はひとりあたり毎日5本の記事を用意しています。200人×5本/人=1,000本もの記事の中から1面のトップ記事が決まります。1面の記事は読者に最も伝えたいこと、美味しい情報を掲載します。彩り豊かな“幕の内弁当”のページと考えることができます。

《毎日確認しよう!❷景気予報》

 もうひとつ欠かせないのが、MARKETSです。掲載内容については改めて細かく触れるとして、ここには私たちが知っておきたい大切な3つのマーケット指標が掲載されています。 ❶日経平均株価(日本の景気の鏡)、❷日経アジア300(アジアの動向)、❸円・ドル(日本とアメリカの力関係)です。

 夕刊(また別の機会に)では、大切な海外のマーケット指標を含めて掲載されています。 朝刊の情報に加えて、NYダウ、ナスダック、FTSE100、長期金利など、朝刊より多くの情報を一覧で確認できます。「快方に向かう」か「悪化する」か、経済の天気予報とも言えますね。

景気の天気予報
景気の天気予報

《毎日確認しよう!❸起承転結を学ぶ》

 下部広告(三八広告といいます)のすぐ上に、春秋という記事があります。朝日新聞の「天声人語」にあたる記事です。編集委員という、ベテラン記者の中でもさらにベテランの方が書いています。

 “経済”というフィルタを通して日々のできごとを説明しています。起承転結がはっきりしていて、とても読みやすい文章です。学生にも読んでもらいたい記事です。

《毎日確認しよう!❹目次で鍛える》

 月曜~平日の朝刊は、左端と上部に枠で囲まれたエリア“NEWS&VIEWS”があります。これは、目次です。上部には見出し、左端にはタイトルと前文が掲載されています。

 見出しの終わりには■で囲まれた数字や文字が掲載されています。これは「■面に掲載されています」という意味です。ですから、読み慣れた人なら数字を見ただけで「なるほど!◯◯に関する記事だ。」ということが分かるようになります。

 さらに、「こういうことが書いてるのかな?」と推測できるようになります。 推測が当たるようになったら、情報感度が鍛えられている証拠です。

【コラム】年間テーマ

 毎年1月1日には、日経新聞の年間テーマを確認することができます。

2022年のテーマ「成長の未来図」

 資本主義がどうなのるのか、豊かさとは何か。
 「何かを取り戻す」「復活を目指す」など、過去をヨシとする見出しが並びますが、そもとも閉塞感に包まれた日本の経済が活力を取り戻すために必要なことは、過去に戻る必要があるのかも、考える必要がありそうです。

 元日の1面で「日経新聞の想い」を知ることができるということですね。

2021年のテーマ「第4の革命 カーボンゼロ」

 カーボンゼロ。ずいぶん聞きなれた言葉になりましたね。2050年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにする宣言されました。それによって、「化石燃料で発展してきた人類史の歯車は逆回転」し、「農業、産業、情報に次ぐ第4の革命」が起こるということです。どんな技術が必要か、いつ/どんな技術が実現するかが、注目されます。

過去のテーマ

年間テーマ(2000年以降)
年間テーマ(2000年以降)

 これまで、どんなことに注目して読者に伝えてきたのか? 年間テーマをまとめてみました。

 タイトルだけでも、“このままじゃアカンよ、ニッポン”って雰囲気が伝わってきます。また、技術は加速的に進化していて、1年前の情報がすでに古びたものになっているのが当たり前になっています。みなさん、ボケ~っと新聞やテレビを眺めているだけではダメですよ。日経新聞が発信する記事を読み、あなた流の“対応策”を考えることが必要です。

つづく。

(注)本記事は2021年5月21日にnoteに投稿した記事を現時点(2022年4月現在)での紙面構成に変更・修正し、追記したものです。

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。