2024年第1回試験の分析(CFP®不動産)

 6月9日(日)に、CFP®試験・2024年第1回試験の第1日程が終了しました。不動産運用設計の出題に対して私が回答した結果、そして感想をお知らせします。

総評

 全体的な構成は概ね従来通りでした。冒頭の収支計算や鑑定評価、建築基準法の計算など、基本に忠実に回答できる出題がある一方で、後半には、数年ぶりに譲渡所得に関する各種特例や、定期借地権に関する計算問題が続き、回答に苦戦したかも知れません。

 それでは、出題内容を振り返ります。※各段落の末尾は(正答したい問数/全出題数)です。

問1・2|住宅の建築・購入に関する注意点ほか

 不動産の特性[問題1]、住宅性能表示制度[問題2]は従来と同水準の出題でした。また、高齢者の居住の安定確保に関する法律[問題3]、サービス付き高齢者向け住宅[問題4]についての知識も理解しておきたいところです。(2問/全4問)

問3|事業収支表(マンション建設による土地活用)

 定番の出題です。事業収支表がどのような過程で計算されるのか、ひたすら単純な計算が必要な内容でした[問題5-7]。

 不動産所得の必要経費[問題8]は、必ず正答しておきたい内容です。(3問/全4問)

問4|収益性からみた不動産価格

 続けて定番の出題内容です。純収益[問題9]、収益性からみた不動産価格[問題10]の計算は、四捨五入などの条件を確認できれいれば十分に対応できる内容でした。一方、不動産証券化のルール[問題11]、プレイヤーについての説明は、やや難しかったように感じました。(2問/全4問)

問5|不動産の鑑定評価

 更地価格の計算過程における空欄の穴埋め[問題13]は、条件に従って正確に理解・正答しておきたい内容でした。更地価格[問題14]の算出についても、ひっかけ要素がなく、順当に正答できる内容でした。

 土地価格の計算[問題15]は条件に従って回答すれば正答できる内容でしたが、読み解くまでに時間が必要だったかも知れません。土地価格に与える影響[問題16]は難しい選択肢がありましたが、明らかに”適切”な選択肢がありました。また公的価格[問題17]の説明についても、判断に迷う選択肢がありましたが、”不適切”な選択肢が2つ、”適切”な選択肢が2つであることで、最終的な判断に至ることができたと思います。(3問/全5問)

問6|宅地建物取引業法

 不動産広告[問題18]、重要事項の説明[問題19]、手付金[問題20]など、基本事項を問う出題が続きました。必ず正解しておきたい水準です。また、区分所有に関するルール[問題20]も必ず理解しておきたいところです。(2問/全4問)

問7|相隣関係

 問題文の設定(条件)を確認していれば借地権の存続期間[問題22]の判断できました。不動産の共有[問題23]に関しては最近出題が多いので正確に理解しておきたい内容です。

 相隣関係[問題24]は改正があったばかりなので、前回に続いて出題があったものと推察します。実務でも大切なことなので理解しておきたい内容です。2023年4月に施行された管理不全土地管理制度[問題25]は前回の出題内容よりもさらに細かい点の理解が必要でした。今後の出題への対応として理解を深めておきたい内容です。(3問/全4問)

問8|建物賃貸借契約、抵当権

 登記事項証明書[問題26]、賃貸借契約(民法)[問題27]、定期借家契約[問題28]、抵当権[問題29]、競売[問題30]について、従来からの出題が多く、その多くを正答しておきたい水準の出題でした。出題の設定(条件)を読むことなく、回答できるものばかりでした。(4問/全5問)

問9|建築基準法、都市計画法

 連たん建築物設計制度についての出題でした。久しぶりですね。
 その制度のしくみ、どのように計算するのか(どこまで容積率に含めるのか)を正確に理解しておく必要がありました。

 精度の適用を受けるかどうかの延べ面積[問題31-32]、建築協定[問題33]、開発行為(都市計画法)[問題34]については、できるだけ正答しておきたい水準の出題でした。(3問/全4問)

問10|不動産の取得時、保有時の税金

 登録免許税・印紙税[問題35]、不動産取得税・固定資産税[問題36]については難しい選択肢がありましたが、明らかに「これは・・」と選択できる選択肢がありました。

 中古不動産に対しての住宅借入金等特別控除の計算(上限)[問題37]については、正確な知識が求められました。(2問/全3問)

問11|譲渡時の税金(所得税における各種特例)

 固定資産の交換の特例[問題38]、事業用資産の買換え特例[問題39]に関しては、ほぼ初めての出題であると言えます。とくに、事業用資産の買換え特例[問題39]は、原則どのように計算するのかを踏まえたうえで、特例の計算方法を理解しておく必要があります。

 また、「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」[問題40-41]についても、初めての出題です。詳細の理解が必要な中で、明らかに”誤り”といえる選択肢がありました。(2問/全4問)

問題12・13|不動産の有効活用

 事業用定期借地権[問題42]の説明、建設協力金方式[問題43]の理解は正答しておきたい水準です。

 一般定期借地権の評価[問題44]は、条件にしたがって正確に計算できることが求められ、その設定による保証金についての課税[問題45]は詳細な理解が必要でした。

 さらに、有効活用に伴う返還床面積[問題46]や土地持分譲渡価額[問題47]については、瞬時に計算が求められる内容でした。(5問/全8問)

問題14|不動産関連法、関連情報

 不動産市場の動向[問題49][問題50]については、実務として概要だけを理解しておけば十分で、各地域・各種不動産ごとに理解しておく必要はないと思っています。(0問/全2問)34

合格ラインは

 これまでと同水準あるいは高いでしょう。今回まとめた「正解しておきたい」出題数が31問/全50問でした。

 【追記】
 2024年7月17日(水)に公表された合格ラインによれば、27問/全50問でした。予想通りでした。

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東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。