2023年第1回試験の分析(CFP®不動産)

 2023年6月11日(日)に、CFP®試験・第1日程が終了しました。2課目め、不動産運用設計について回答してみたので、結果・感想をお伝えします。

総評

 全体的な構成は従来通りでした。若干、出題方法が変更になった部分もありますが、計算問題は易しくなったものと難しくなったものが混在し、文章題はさらに難かしくなったと感じました。

 とくに不動産収支(事業収支表)に関しては、さしぶりに易しい出題となりました。ただし、あまりに時間がかかるので、解答は後回しにしたほうが良い内容です。

 不動産の特性、諸問題、価格動向に関する出題は細かい知識が求められました。

 では、さっそく出題内容を振り返ります。※各段落の末尾にあるのは(正答したい問数/全出題数)です。

問1|不動産の特性、諸問題

 土地の自然的特性[問題1]、投資対象としての特性[問題2]など、かなり久しぶりの出題でしたが、一般的な知識で十分に対応できるものでした。耐震性やアスベスト[問題3]、アスベスト[問題4]は、定番の問題でした。できるだ多く正答しておきたい内容でした。(3問/全4問)

問2|事業収支表(マンション建設による土地活用)

 定番の出題です。ここ数回、事業収支表がどのような過程で計算されるのか、根本を問うものであり「算数の能力」が問われていました。今回は、とくにややこしい計算・算数の能力が求められることなく、丁寧に計算すれば正答でききるものです。

 ただし、[問題3]~[問題4]はあまりに回答に時間がかかるるなら後回しが良いです。定番の税金に関する知識[問題5]だけ回答できれば十分でしょう。(1問/全3問)

問3|収益性からみた不動産価格(複利現価)

 定番の出題内容です。投資関連用語[問題10]、証券化に関する知識[問題11]についても再気温では定番と言えます。計算問題[問題8][問題9]は短時間で必ず正答できておきたいレベルでした。(3問/全4問)

問4|不動産の鑑定評価・公的価格

 定番の問題ですが、前回よりは難易度が上がりました。積算価格の算定方法(ルール)にしたがって解答すれば充当に正解へと辿り着きます。条件が多いので、どれだけ過去問に取り組んだかで解答スピードが大きく違ったと思います。条件を読み間違えると、補正率[問題12]、更地価格[問題13]、積算価格[問題14]いずれも連鎖的に間違えてしまう出題でした。

 収益価格に関する知識[問題15]、公的価格[問題16]についても一般論として十分正答できる内容でした。これらの出題で多く得点できることが合否を分けたかもしれません。(4問/全5問)

問5|宅地建物取引業

 不動産広告[問題17]についてはこれまでより難しく感じました。契約締結時等における禁止事項[問題18]や、住宅性能表示[問題19]については細かいところまで気づいていること、住宅瑕疵担保履行法[問題20]は確実に得点しておきたい定番問題です。全般と通して、過去問を繰り返し演習していれば、難なく回答できたレベルの出題です。(2問/全4問)

問6|建物賃貸借、権利義務

 建物賃貸借に関する基本知識[問題21]、賃料[問題22]に関しては必ず正答しておきたい内容です。一方、連帯保証[問題23]、区分所有に関する権利義務[問題24]に関しては、文章の表現がややこしく理解するのに時間がかかったかもしれません。いずれにしても、その多くは確実に正答しておきたい水準です。(3問/全4問)

問7|不動産登記

 前回につづき、登記に関する出題が集中しました。登記事項証明からの持分計算[問題25]、特定筆界[問題26]、共有持分の移転登記に関しては、基本事項を理解しておきたいレベルでした。根抵当権[問題28]については、これまで以上に細かい理解が必要だったので判断に迷った人が多かったかも知れません。(3問/全4問)

問8|建築基準法、都市計画法

 都市計画道路がある場合の容積率(延べ面積)[問題29]、建蔽率(敷地面積)[問題30]の判断に迷ったかも知れません。問題の設定に”事業認可を受けていない”と書いてあることが大きなヒントでした。

 道路予定地への建築[問題31]、容積率に関する知識[問題32]、防火地域[問題33]はできるだけ多く得点しておきたい内容でした。

 防火地域と建蔽率との関係は近年変更があったので、最近は定番の出題です。(3問/全5問)

問9|不動産の取得時、保有時の税金

 登録免許税や印紙税[問題34]、不動産取得税や固定資産税[問題35]にて、非常に易しい出題でした。どちらも必ず正解しておく必要があります。また、住宅取得等資金の贈与の特例[問題36]は慈非課税額を覚えていたか、住宅ローン控除[問題37]については控除率が0.7%になったことを理解しているかという単純な出題でした。(3問/全4問)

問10|譲渡時の税金(所得税における各種特例)

 3,000万円の特別控除や軽減税率の適用方法/計算[問題38]、買替えの特例[問題39]、空き家の特例[問題40]について、いずれも基本的な知識で乗り切れる内容でした。タックスにてしっかり理解できれていれば容易な出題でした。【不動産に係る譲渡所得(2問/全3問)

問題11|不動産の有効活用と相続対策(固定資産の分割・事業用定期借地権)

 各人の取得面積[問題41]は算数の計算レベル、事業用定期借地権[問題42]は何度も出題されている内容でした。できるだけ正答したい内容です。久しぶりに、借地権の相続税評価、建設協力金に関しての出題がありませんでした。(1問/全2問)

問題12|不動産の有効活用(等価交換)

 定番の計算問題ですが、今回は最も計算回数の多い設定でした[問題43]~[問題45]。ただし、何度も過去問を演習していた場合には、要領を得ていて楽勝だったかと思います。立体買換え特例[問題46]では、やや細かい内容が問われました。難しい選択肢が並びましたが、ひとつだけ明らかに不適切な選択肢があったことに気づけたでしょうか。(3問/全4問)

問題13|不動産関連法、関連情報

 マンション管理の適正化[問題47]については初出題でした。”賃貸住宅管理業法”についての出題が1度ありましたが、マンションの老朽化に特化したものは初めてです。農地[問題48]はたまに出題されますね。今回も基本的な問いでした。地価動向[問題49][問題50]については、リート市場全体、三大都市圏の動向を詳細に理解していることが求めらる難題でした。(1問/全4問)

さて合格ラインは

 これまでと同水準でしょう。今回まとめた「正解しておきたい」出題数が32問/全50問でしたので、この前後でしょう。

【2023年7月20日追記】
 2023年7月19日に合格ラインが公表されました。31問以上が合格とのことです。予想通りでした。典型的な出題が多かったので、是非とも合格しておきたい水準です。

 なお、今回の試験(2023年第1回)の解答解説を含んだ「新・図解」は2023年7月末発売です。

■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
 金融不動産ライフリスクタックス相続

■試験対策(2024年第2回試験向け)
 最新版テキスト(購入)テキスト訂正事項受験対策講座・質問会(受講)

■CFP®試験・不動産運用について
 ・不動産運用に合格したいあなたへ
 ・試験分析/不動産 2021年 第1回 第2回
 ・試験分析/不動産 2022年 第1回 第2回
 ・試験分析/不動産 2023年 第1回 第2回
 ・試験分析/不動産 2024年 第1回

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。