2024年第1回試験の分析(CFP®ライフプラン)

 2024年6月9日(日)に実施されたCFP®試験・第1日程3課目めは、ライフプランニング・リタイアメントプランニングです。私が回答してみた結果・感想をまとめました。最後には気になる合格ラインのお知らせもあります。

印象

 これまでとほぼ同様の出題内容(分野)でしたが、最新の知識が必要な出題や、これまでよりも深い計算能力が求められる出題も多かったように感じます。

 また、これまでほぼ出題の少なかった分野での出題や、従来からひっかけ要素の多い計算問題などに苦労された方も多かったかも知れません。

【ご参考】細かい知識が問われる主な分野
・金融サービス提供法、個人情報保護法
・年次有給休暇、育児介護休業法、最低賃金法、賃金のデジタル払い、教育訓練給付
・確定拠出年金、国民年金基金、小規模企業共済

 なお、働き方に関連する法律(問5)の出題数が増えている一方で、公的年金に関する出題は減っていることが気になりました。

 では、以下に出題内容を振り返ります。各段落の最後には(正答したい問題数/全出題数)を記載します。

問1|FP関連業法

 CFP®認定者の行動規範[問題1]は必ず理解しておきたいところ。そして、いわゆる金融サービス提供法[問題2]、個人情報保護法[問題3]ともに金融資産での出題がメインでしたが、今回FP関連業法としてライフプランでの出題となりました。いずれも細かい理解が必要な内容ですしたが、やや難題です。(2問/全3問)

問2|ライフプランに関する最新情報

 日常生活自立支援事業[問題3]、医療費控除[問題4]は、どちらも必ず理解しておきた内容です。とくに日常生活自立支援事業については、時事問題として頻出ですので必ず正答できるようにしておきましょう。(2問/全2問)

問3|キャッシュフロー表、6つの係数

 前回【2023年第2回】とほぼ同じ出題構成。6つの係数の活用方法の理解[問題8]【過去の出題解説】は、時間に余裕がある場合に回答するとしても、キャッシュフロー[問題6-7]については、電卓の使い方を含め、即答できるような練習が必要です。従来通りの出題水準でした。(2問/全3問)

問4|住宅取得資金・教育資金

 住宅ローンの返済額[問題9]は、出題方法に少し変化がありましたが、年金現価係数・資本回収係数の使い方が分かっていれば十分に正答できます。住宅ローン控除[問題10]は、”適用される物件要件”、”居住要件”などの詳細な理解が必須です。

 教育一般貸付[問題11]の知識、奨学金の返済額の計算[問題12]、貸金業法の総量規制[問題13]は、頻繁に出題されている水準だったので、必ず正答しておきたいですね。紛争解決委員会[問題14]については、難しい選択肢もありましたが、消去法で正答できるもので。問4は、わりと即答できる出題が多かったです。(4問/全6問)

問5|働き方関連の法律…労働基準/最低賃金/雇用/労災/育児・介護休業

 働き方関連の知識は数年来の時事問題であり、それらの詳細を(知識だけでなく各種計算方法なども)深く理解しておくことが求められます。出題数が増えつつあり、ここでの正答数が大きく影響するはずです。

 年次有給休暇[問題15]、育児介護休業法[問題22-23]は、正確に辿りつくことが難しい選択肢がいくつかあり、回答に苦慮したかも知れません。

 最低賃金法による賃金額の計算[問題16]、高年齢雇用継続基本給付金[問題20]、そして休業補償給付[問題21]の計算は、随所に注意が必要でした。とくに「賃金」とは何を指すのかの正確な理解が求められました。

 賃金のデジタル払い[問題17]に関しては初出題、教育訓練給付[問題19]は従来よりもはるかに細かい知識が必要でした。一方、基本手当の特定受給者[問題18]は基本知識で十分対応できたと思います。(5問/全9問)

問6|健康保険、介護保険の保険料など

 定番の出題でした。過去の出題にしっかり取り組んでいたら、大きな得点源となったことでしょう。

 とくに国民健康保険料[問題24]、源泉徴収所得税[問題25]、介護保険の利用者負担[問題26]はほぼ毎回出題されるので、焦らず出題を読み、丁寧に回答していけば十分に対応できます。

 標準報酬月額の定時決定・随時改定[問題27]、短時間労働者の要件[問題28]、社会保険の適用事業所[問題29]は、やや難しめの出題でしたが、どれだけ過去問に取り組んでいたかが結果に反映されたと思います。(4問/全6問)

問7|協会けんぽ

 任意継続被保険者[問題30]、傷病手当金の資格喪失[問題32]、療養の給付[問題33]は即答できる定番問題です。傷病手当金の計算[問題31]では資格手当に気づいたか、高額療養費【過去の出題解説】の計算[問題34]では合算の対象となる医療費の判断ができたかがポイントです。(4問/全5問)

問8|公的年金

 老齢給付の計算と知識[問題35-37]、障害給付の知識[問題38]、遺族給付の計算と併給[問題39-40]でした。これまでよりも計算問題が(そもそも出題数が)少なくなった印象です。保険料の追納制度[問題41]は従来のように概要だけを理解しただけでは対応できる内容ではありませんでした。改めて確認しておきましょう。

 計算問題ではどうしても”うっかり”が生じますが、できるだけ得点しておきたい分野です。(5問/全7問)

問9|企業年金、退職金

 確定拠出年金[問題42]、国民年金基金[問題43]、小規模企業共済[問題44]は各制度の概要だけを理解しておけば十分です。ただし、確定拠出年金については頻繁に制度変更が行われているので、知識の更新が必要です。退職所得の計算[問題44]は必ず正解したい出題レベルです。(2問/全4問

問10|中小法人の資金計画

 理論株価の計算[問題46]は久しぶりの出題でしたが、問題<資料>にしたがって順番に回答を進めれば良い内容でした。ただし、[割引率]とは何かを理解しておく必要がありました。(1問/全1問

問11|リタイアメントプランニング

 任意後見制度[問題47]、後見制度支援信託[問題48]、不動産担保型生活資金貸付制度[問題50]などの時事問題でした。やや細かい選択肢もありましたが、概要さえ理解していれば正答できたと思います。介護施設[問題49]については必ず理解してきたいところです。

 ライフプラン・リタイアメントプランでは、どの分野も、試験対策はもちろん業務においても重要な内容なので、しっかり身に着けておきたいです。(2問/全4問)

さて合格ラインは

 一部にひっかけ要素が多かったり、詳細な知識が必要な出題もありましたが、私が判断した正答しいたい問題数は33問/全50問としておきます。

 【追記】
 2024年7月17日(水)に公表された合格ラインによれば、26問/全50問でした。予想よりも、かなり難しかったようです。今後も、税制や社会保険制度の改正が続きます。とくに育児・介護に関する制度、労働環境についてさらに正確な理解が必要です。

■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
 金融不動産ライフリスクタックス相続

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■CFP®試験・ライフプランについて
 ・ライフ/リタイアメントプランに合格したいあなたへ
 ・試験分析/ライフリタイア 2021年 第1回 第2回
 ・試験分析/ライフリタイア 2022年 第1回 第2回
 ・試験分析/ライフリタイア 2023年 第1回 第2回
 ・試験分析/ライフリタイア 2024年 第1回

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。