2023年第2回試験の分析(CFP®ライフプラン)

 2023年11月12日(日)に、CFP®試験・第1日程が終了しました。3課目めは、ライフプランニング・リタイアメントプランニングです。回答した結果・感想をまとめました。最後に気になる合格ラインのお知らせもあります。

印象

 これまでと同様の出題が多くありましたが、従来は文章題での〇✖判定していた内容を、具体的な計算問題として出題されるケースが多数ありました。また、従来と同様の出題でも、その適用要件をさらに深く正確に理解できているかの問いもありました。

細かい知識が必要な出題
・住宅取得、税制に関する要件
・労働基準法、育児・介護休業法の知識
・雇用保険に関する給付の計算方法
・公的年金、企業年金の給付要件

 以下に出題内容を振り返ります。
 各段落の末尾には(正答したい問数/全出題数)を示しました。

問1|FP関連業法

 CFP®認定者の倫理原則[問題1]、関連業法[問題2]の知識は、いずれも業務を行う上での記事本事項ですから、必ず理解したい内容です。(2問/全2問)

問2|ライフプランに関する情報

 年金生活者支援給付金[問題3]、障害者の雇用の促進に関する法律[問題4]は、いずれも時事問題です。基本事項を理解していれば大きな得点源でしたが、これまで出題が少なく正答ができなくても仕方のない内容でした。(1問/全2問)

問3|キャッシュフロー表、6つの係数

 6つの係数の活用方法の理解[問題7]【過去の出題解説】は、時間に余裕がある場合に回答するとして、少なくともキャッシュフローの理解[問題5-6]については、電卓の使い方を含め、即答できるよう練習しておきましょう。

 そして本問以降も、回答に時間のかかる出題が多くありました。(2問/全3問)

問4|住宅取得資金・教育資金

 住宅ローンの返済額[問題8]は、年金現価係数・資本回収係数の利用方法を理解していれば容易に回答できる出題でした。フラット35[問題9]、住宅ローン控除[問題10]は、”適用される物件要件”、”居住要件”などの詳細な理解が求められます。

 教育一般貸付[問題11]の知識、リボルビング払いの計算[問題12]は、過去に何度も出題されていたので、正答しておきたい内容です。また、紛争解決委員会[問題13]について識は「リスクと保険」において必ず理解しておきたい内容です。

 問4は、全体として細かい知識を必要とする出題が続きました。(3問/全6問)

問5|働き方関連法…労働基準、雇用、労災、育児・介護休業法

 近年、出題が多い分野ですが、割増賃金[問題14]に関しては難しい内容でした。

 基本手当[問題15]、高年齢雇用継続基本給付金[問題16]、休業補償給付[問題17]の計算は、いくつも注意が必要でした。回答に苦戦した方が多かったのではないでしょうか。

 労災保険の知識[問題18]は初出題で難題であった一方、育児介護休業法[問題19-20]は基本知識で十分対応できる内容でした。(4問/全7問)

問6|健康保険、介護保険の保険料など

 定番の出題でした。国民健康保険料[問題21]は、長男(未就学児)に関する条件を確認しておく必要がありました。社会保険料の総額[問題22]は、介護保険の被保険者の理解が必要でした。

 介護保険の利用者負担[問題23]は毎回のように出題されますが、”理解しているか”というよりは、問題の設定条件、フローチャートをきちんと読んでいるかを問う出題です。実務に役立つかは、やや疑問です。

 介護保険制度[問題24]は基本事項でしたので正答しておきたい水準ですが、社会保険の適用事業所[問題25]については、出題されるたびに詳細な知識が求められるようになり、正答できなくても仕方ないレベルでした。(4問/全5問)

問7|協会けんぽ

 珍しい・・・というか、久しぶりにひっかけ要素の出題が続きました。

 任意継続被保険者[問題26]、被扶養者の要件[問題27]は定番問題です。傷病手当金の計算[問題28]、退職等による資格喪失後の給付[問題29-30]は、最近出題が多い内容です。ただし、死亡に係る給付については初出題でしたので、正答できなくても仕方のない内容でした。

 今回、高額療養費【過去の出題解説】の出題が無く、大きな得点源でした。(4問/全5問)

問8|公的年金

 老齢給付[問題31-33]、障害給付[問題34-35]、遺族給付[問題36-37]の出題でした。いずれも従来から続く出題ですが、給付の要件を正確に理解しているかで正答数が大きく変わる出題だったように感じます。

 年金や社会保険の併給に関する知識[問題38]、年金分割制度[問題39]の出題が今回もありました。覚えることが多いために理解が難しく、正答できれば合格に近づく内容です。(6問/全9問)

問9|企業年金、退職金

 確定拠出年金、iDeCo+について[問題40-41]、細かな知識が求められました。

 国民年金基金の給付[問題42]、小規模企業共済の共済金[問題43]、退職所得[問題44]は何度も出題されている計算問題ですので、必ず正解したい出題でした。(3問/全5問

問10|中小法人、個人事業主の資金計画

 資金繰り表の理解[問題45]、経営セーフティ共済の知識[問題46]は、従来から出題されている内容でした。(1問/全2問)

問11|リタイアメントプランニング

 任意後見制度[問題47]、自筆証書遺言[問題48]、サービス付き高齢者向け住宅[問題49]、不動産担保型生活資金貸付制度など、時事問題ばかりでした。やや細かい内容まで理解しておく必要がありましたが、繰り返し出題され、コンサルティングにあたり重要なものばかりですので、多く正答しておきたい出題でした。(2問/全4問)

さて合格ラインは

 一部にひっかけ要素が多かったり、詳細な知識が必要な出題もありましたが、まとめた「正解しておきたい」出題数からすると、32問/全50問あたりが合格ラインと推測します。

 2023年12月20日(水)に合格ラインが公表されました。29問/全50問とのことです。従来よりも詳細な知識が必要であったり、給付金等を正しく計算することが求められていたことが影響していたようです。

 今後、税制や社会保険制度の改正が続きます。健康保険をはじめとする保険料の算出方法、給付にあたっての要件、育児・介護に関する制度、労働環境について正確な理解が必要です。

 なお、今回の試験(2023年第2回)の解答解説を含んだ「新・図解」は2023年12月27日(水)に発売予定です。

■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
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■CFP®試験・ライフプランについて
 ・ライフ/リタイアメントプランに合格したいあなたへ
 ・試験分析/ライフリタイア 2021年 第1回 第2回
 ・試験分析/ライフリタイア 2022年 第1回 第2回
 ・試験分析/ライフリタイア 2023年 第1回 第2回

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。