金融資産運用はCFP試験6課目で最も難易度の高く(合格点が低く)、より専門的な知識が求められます。また、普段から使用している電卓で構いませんから、機能をしっかり活用することも必要です。とくにメモリー機能や、GTは正しく使えるようにしておきましょう。
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目次
計算問題が多い
約半数が計算問題です。計算が苦手な方は相当苦戦するでしょう。どうしても数学が苦手な場合には計算式を覚えることに徹してください。また、過去問は2019年以降の問題を回答演習し、「出題傾向の把握」と「解法の理解」に努めましょう。
<計算問題で多く出題される内容>
- 預貯金 税引き後の元利合計、利回り
- 債券 債券価格、利回り、デュレーション、スポットレート
- 株式 投資尺度、申告・還付税額
- 投資信託 【個別元本/税引後の受取配当金/トータルリターン】
- 外貨建て商品 債券の収益、投資信託の収益、預金の利回り、生命保険の課税
- デリバティブ オプション価格【パリティについて】【期待値について】、先物取引(株価指数連動型)、先物ヘッジ枚数
- ポートフォリオ 標準偏差、期待収益率・時間加重収益率、シャープレシオとトレーナ尺度【詳しい解説】、標準正規分布【詳しい解説】
時事ネタは概要を理解しておくこと
時事問題(最新の景気動向などの市況データ)に関する出題は、4~10問程度あります。まずは各指標の意味、景気の良し悪しの判断、その理由、を確認しましょう。
景気動向の報告書、たとえば金融システムレポート(日銀)、経済・物価情勢の展望(日銀)、年次経済財政報告(内閣府)などの資料の概要を読んで覚えましょう。物価動向、消費動向、対外貿易、日銀の政策など、過去問から出題傾向を理解しておくことも必要です。とくに
・2020年から2021年の景気・経済が新型コロナでどう影響を受けたか
・2019年以前の世界経済
は出題されやすいので確認しておきましょう。
あなたに合った回答方法、学習方法
[別記事]資格試験を勝ち抜くコツを作成しました。
定番問題1. 経済指標、金融市場
●経済指標
まず大切なのはGDPに関する知識です。どのような構成か、とくに消費(支出)面からみた構成比は要チェックです。併せて、各国GDPの額、日本の貿易収支の動向などざっくり理解しておきましょう。
ほかにも「マネーストック」「景気動向指数」「日銀短観」など基本的な知識は押さえておきましょう。それぞれの内容、いつどこの省庁が発表するのかなど、2級技能士(AFP)でも出題されたレベルで十分です。
●金融市場
短期市場・長期市場の代表金利ほか、金利と景気の関係について理解が必要です。またその結果、経済活動がどうなるのかを示す「在庫循環」についての出題が多いようです。
おおむね「景気が良い時には市場はどうなるのか」の理解ができていれば難しい出題ではありません。また、その起爆剤としての金利政策、オペレーション、預金準備率については、「どのようなとき」に「何をどう変化させるのか」の理解ができれいれば十分です。
●財政政策
日本とアメリカの「財政収支」の考え方の違いです。所与された表の空欄を確実に埋められるように、両国の構成を確認しておきましょう。
定番問題2. 貯蓄商品
●非課税貯蓄
財形貯蓄制度に関する出題が必ずあります。一般財形、財形年金、財形住宅について
・預け替えの可否(基本不可)
・利用目的(財形年金→60歳以降の年金、財形住宅→住宅取得)
・積立期間(一般財形は3年、他は5年)
などの基本要件はもちろん、最近では解約時、目的外払出し時の取扱いに関する出題が多いので、比較して覚えるようにしましょう。ただし、出題は多くても2問ですから省略するのもアリかと。
●定期性預金の手取り額
具体的な貯蓄商品の商品知識については、ほとんど出題がありません。定期預金など、定期性預金の運用成果(手取額または利回り)の計算をできるようにしましょう。頻出は下記2商品です。
- スーパー定期
3年未満は単利/3年以上は半年複利で、満期一括払い - 定期貯金
1ヶ月以上3年未満は単利/3~5年もの半年複利、都度課税
念のため補足ですが、例えば3ヶ月運用の際の利回りは「利益÷投資額×4」です。ミスの無いように。
定番問題3. 債券
●債券金額
債券の価格(理論価格や市場価格、取得単価)や利回りの出題が2~3問あります。
まず、債券の種類(単利利付債、複利利付債、複利割引債)を確認し、回答に必要な情報を集めめましょう。多くの公式がありますが、ほとんど覚える必要はなく(計算が苦手なひとは覚えてください)、式の意味を理解していればどのような出題にも対応できるようになります。瞬時に出題の意図が理解できるようにもなります。
・スポットレート:今から始まる一定期間の利回り
・フォワードレート:将来のある時点からスタートする利回り
・複利最終利回り:運用成果として期待している利回り
この3つの違いを必ず理解しておきましょう。そうすれば必ず大きな得点源になります。簡単な結論だけを言うなら、理論価格を求める場合はスポットレートやフォワードレート、市場価格を求める場合は複利最終利回りを使います。
●デュレーション
さらに重要なのがデュレーションです。「文章題の穴埋め」「きちんと計算」いずれかで問われます。デュレーションとはいったい何かを理解すれば、公式の意味も分かるし、計算過程を大幅に減らせます。まずは過去問で何度も演習し、電卓を効率よく使う練習から始めましょう。
●その他
債券の税金は株式を合せた出題になので、株式との違いを理解して演習を繰り返しましょう。また、個人向け国債の金利・解約時の返金についてのルールの理解も余裕があればお願いします。これらは1問程度です。
定番問題4. 株式
株式で、専門性の高い知識を問われることがあります。分からなければ適当にマークして次へ進みましょう。年のため、最近の出題で言えば以下の通りです。
- 株式指標
日経が公表する指標「日経ジャスダック平均株価」「日経株価指数300」「JPX日経インデックス400」など※2022年4月改定の指標にも注意です。 - テクニカル分析
ローソク足、移動平均線の「ゴールデンクロス」「デッドクロス」 - 売買制度
東証の取引時間、取引単位、受け渡しルール - TOB
株式公開貸付のルール
2級(AFP)での知識で回答できることもあるので、消去法で乗り切るのもアリでしょう。
●信用取引
最近が出題が少なくなりました。過去には
・約定金額
・委託保証金(保証率30%の場合など)
・差入れ必要額(代用掛目率80%の場合など)
・逆日歩を設定した銘柄の譲渡所得
など計算問題もありました。そろそろ出題があってもおかしくないので、文章題だけでも過去問で確認しておくと良いでしょう。
※2020年第2回 文章題、2018年第1回 文章題、2016年第1回 譲渡所得
※近年は「制度信用取引」の知識を問う出題が中心です。
●投資尺度
毎回同じ形式です。法人の決算情報(財務諸表)から、PERやPBR、売上高営業利益率や自己資本比率などの計算問題です。決算情報に与えられていない情報は、分かっている事項から類推する必要があるので、たとえば配当利回りや配当性向とはどういう意味だったかを踏まえての回答が必要です。さらに「自己資本」とはどこを意味するのか、「自己資本を使う場合にはどの時点の数値を用いるのか」など、問題の設定をいち早くチェックしましょう。
●株式にかかる税金
年間取引の結果、納付・還付税額や、翌年以降へ繰り越される損失などについての計算です。
なお注意点は以下の通りです。
- 譲渡益:申告分離課税(源泉あり口座で都度徴収)
- 譲渡損:同一年にすでに源泉された譲渡益があれば通算・還付
- 配当金:試験では申告分離課税(源泉あり口座で徴収)として出題。配当金は、年間の利益が確定した時点で譲渡損があれば通算され、配当から源泉されていた税額が還付されます。
過去問で繰り返し演習をお願いします。また、NISA口座は原則非課税ですが「配当金領収書方式」を選択した配当金は課税対象ですので注意が必要です。
定番問題5. 投資信託
●基本知識
- 委託者(投資信託委託会社)の役割 → 目論見書とは、運用報告書とは
- ETF、J-REIT → 売買のルール、課税方法、日銀による買入規模(時事問題)
●計算問題
出題が多いのは以下の3つです。
- 解約時の税金(譲渡所得) → 購入手数料や取得費をどのように計算するか【詳しい解説】
- 分配後の新個別元本 → 再投資や追加投資した場合の個別元本【詳しい解説】
- トータルリターン → 初回購入日からのトータルの損益【詳しい解説】
どれも難しい出題ではないので、落ち着いて回答しましょう。
定番問題6. ポートフォリオ
まず「相関係数」「リターン」「リスク」の意味を理解しましょう。最近は計算問題も多く、CAPMなどの図が意味する内容を細かい部分まで問われることもあるので、理解を深めておきたい分野です。
●リターン(収益率)、リスク(標準偏差や分散)の計算
計算問題はリターンおよびリスクの計算です。
【期待収益率 (単利)】将来の収益率とその確率の加重平均
期待収益率=(予想収益率×確率)の合計
※計算式は覚えてください
【時間加重/実績収益率 (複利)】過去の実績から推測
実績収益率=(期間√(末期価格/初期価格)-1)×100
※計算式は与えられます
【リスク】不透明さ、不確実性
分散=((予想,実績収益率-期待収益率)2×確率)の合計
標準偏差 = √分散
※計算式は覚えてください
ほぼ定型の出題ですので確実に得点しましょう。計算式の意味が理解できれいれば応用問題に対応できます。過去問を繰り返し演習することから始めましょう。
また、期待収益率と標準偏差を利用した応用問題として【標準正規分布】に関する出題があります。必須問題ではありませんが、一度理解すると容易に正答できる内容です。
●ポートフォリオの評価
シャープレシオやトレーナレシオなど、定番の穴埋め問題、計算問題が続きます。これを理解すると本当に分かりやすくて簡単な内容になります。【詳しい解説】
【シャープレシオ】
リスクからどれだけ効率的に収益をあげられるか=プレミアム÷リスク
【CAPM(資本市場価格モデル)】
個別株式のもつβ値から、その銘柄へ投資する投資家がどれだけの収益が期待できるか予想できるモデル。
※β値とは日経平均株価などの株価指数に対する個別銘柄の連動性
β=1 → その銘柄の値動きが株価指数と同じ動き
β=1.5 → 日経平均が1%上昇したとき、その銘柄の株価は1.5%上昇
【トレーナレシオ】
その銘柄(証券)はβが1増えるたびにどれだけのプレミアムを得られるか=プレミアム÷β
【ジェンセンのα】
βから予想される収益率(理論上)に対し、実際の収益率がどれだけズレているかを示す。
定番問題7. 外貨建て商品
- 為替取引 実効レート、直先スプレッドなどの出題が殆どなくなりました
- 外貨預金
- 外債 クーポンの受取り回数、課税、為替レートに注意
- 外国投信 分配金の課税、為替レートに注意
- 外貨建て個人年金保険 5年未満で解約した場合、源泉分離課税
- 外貨建て終身保険 運用益や為替差益は解約時にまとめて一時所得
時間のかかる出題ばかりで、過去問は殆ど役に立ちません。とは言っても、いろいろな考え方・発想を養うには重要な問題ばかりなので、十分に学習時間がある場合には演習しておきましょう。基本に忠実に、最後に余裕をもって回答するのが良いでしょう。
定番問題8. デリバティブ
●先物取引
計算問題は「先物ヘッジ比率」「先物の理論価格(株式指数先物取引)」が必ず出題されます。計算式は与えられませんので、公式を理解したうえで正答できるようにしたいです。
【先物ヘッジ比率】
価格変化(分散)を最小にするために必要な現物1あたりの先物保有枚数を求めます。先物の種類ごとに取引単位が異なるので、それも覚えておく必要があります。
【株価指数先物取引(指数の売り買い)】
インデックスに連動する金融商品の理論価格を計算する問題です。先物を買う場合には、現物を買うために用意していた資金を短期金利で運用できる一方で、配当を受けられません(現物を買う場合には、購入代金を借り入れにより賄う一方で、配当を受けることができる)ことを意味しています。
●オプション取引
「プットとコール」「買い手(ロング)と売り手(ショート)」の理解ができていることが大前提です。これらをどう組み合わせるかによって、どのような戦略ができるのか、パズルを解くような出題があります。
【ロング・ストラングル】
・権利行使価格が高いコールの買いと安いプットの買い
・株価が大きく変動するほど、利益は増大」
【ショート・ストラングル】
・権利行使価格が高いコールの売りと安いプットの売り
・受け取りプレミアムの合計額が最大利益
【バーティカル・ブル・スプレッド】
・株価は上昇すると予想するものの確信が持てないとき
・権利行使価格が安いコールの買いと高いコールの売り(左下)
・権利行使価格が安いプットの買いと高いプットの売り(右下)
【バーティカル・ベア・スプレッド】
・株価が先行き下落すると予想するが、確信がないとき
・権利行使価格が高いプットの買いと安いプットの売り(左下)
・権利行使価格が高いコールの買いと安いコールの売り(右下)
このほかにも、オプションの理論価格【2項モデル】、プットオプションとコールオプションの関係式【プット・コール・パリティ】の出題対策も必要です。
総括
とにかく合格したい!という場合は、2019年以降の過去問題集を購入して「出題傾向」「計算方法」の理解に取り組みましょう。
無事合格された後、試験で勉強した内容を改めて理解し実務に活用することで、金融は本当に楽しい分野だと思えるようになります。景気のことが理解できるようになり、投資家としても役に立つことがたくさんあります。
■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
金融|不動産|ライフ|リスク|タックス|相続
■試験対策(2024年第2回試験向け)
最新版テキスト(購入)|テキスト訂正事項|受験対策講座・質問会(受講)
■CFP®試験・金融資産運用について
・金融資産運用に合格したいあなたへ
・試験分析/金融 2021年 第1回 第2回
・試験分析/金融 2022年 第1回 第2回
・試験分析/金融 2023年 第1回 第2回
・試験分析/金融 2024年 第1回 第2回