2024年11月17日(日)に、CFP®試験・第2日程が終了しました。相続・事業承継の出題内容を確認し、回答して気づいたことや感想をまとめました。最後には、気になる合格ラインも掲載しました。
目次
総評
ほぼ従来通りの出題構成です。前回(2024年第1回)と同様、法改正の知識、初出題などが続き、回答に苦慮する出題がいくつもあったと推測します。
相続対策に関する出題は少なくなり、事業承継対策に関する出題は従来通りか、難易度が高まる傾向があります。
以下、出題内容を振り返ります。※各段落の終わりに(正答したい問題数/全出題数)を記載しています。
問1|相続の概要、民法の規定
初出題や改正事項に関する出題が多く、回答に苦戦した方が多かったでしょう。
民法上の相続分[問題1]、税額等を決める際の相続分[問題2]の違いについて、基本に忠実であれば正答できるものでした。また、兄弟姉妹には遺留分[問題3]がないことに注意が必要でした。
特別受益[問題4]には改正があったことを理解していたか。また、相続する土地に関する知識[問題5]、相続土地帰属制度[問題6]については難しい選択肢が並びました。
配偶者居住権[問題7]、遺贈[問題8]については消去法で回答できる出題でした。 (5問/全8問)
問2|遺言、成年後見
自筆証書遺言や公正証書遺言[問題9]、遺言の効力[問題10]、遺言執行者[問題12]は、過去に何度も出題があった内容で、必ず正答しておきたい水準でした。
相続登記の義務化[問題11]は初出題でしたが、実務でも役に立つ事柄なので、しっかり理解を深めておきましょう。(3問/全4問)
問3|相続税の仕組み、課税価格の合計額
相続税の課税財産の算出方法に関する出題です。従来とほぼ同じ構成でしたが、税制改正等の詳細な理解が必要でした。
死亡保険金の非課税金額[問題13]、退職手当金等[問題14]については必ず正解しておきたい定番の出題です。債務控除[問題15]は、放棄した者の扱いや、各注意事項への対応が必要でした。
生前贈与加算[問題16]は税制改正により、今後、加算の対象年が順次7年まで拡大されます。
出題にある2031年の相続では、
・2024年分からの贈与が加算対象になる
・改正されたことにより新たに加算対象となる資産から総額で100万円の控除ができる
といったことの理解が必要でした。今回の出題では、生前ちょうど7年遡るため、問題に記載のある「2024年4月」の贈与は対象外です。(2問/全4問)
問4|小規模宅地等の特例
本特例のみで出題が構成されるのは非常に珍しいケースです。使用貸借とは何か?が分かっていれば、あまり深く悩まずに回答できたはずです。
相続により宅地を取得した者に対する適用要件[問題17]に関し、かなり細かい知識が必要でした。課税価格に算入すべき価額[問題18]は、どの宅地に対して優先的に特例を適用するか、すぐに判断できるコツを知っている人は即答でしたね。
2次相続における適用[問題19]についても、条件設定が細かく、なかなか正答に辿り着けなかったかも知れません。(1問/全3問)
問5|相続税の総額
わりとシンプルな親族人等関係図のため注意点が少なく、容易に回答できるものが多かったのではないでしょうか。
相続税の基礎控除[問題20]、相続税の総額[問題21]、2割加算[問題22]など、必ず理解しておきたい内容です。久しぶりに相似相続控除[問題23]の出題がありましたが、容易に判断できたと思います。
今回は出題がありませんでしたが、配偶者の税額軽減【過去問の出題】、障害者控除、未成年者控除なども、押さえておきたいところです。(3問/全4問)
問6|相続税の申告、納付
相続税の物納[問題24]、連帯納付義務[問題25]、未分割である相続財産[問題27]については、過去に何度も出題があるので必ず正答できるよう知識を深めておく必要があります。
所得税の準確定申告[問題26]は、各選択肢とも説明がややこしく、意味を理解するのに時間がかかったかも知れません。(2問/全4問)
問7|贈与税・相続時精算課税制度
暦年課税の贈与税額[問題28]は定番問題で、一般税率と特例税率を適用する方法を理解できれいれば十分でした。相続時精算課税制度における税額計算[問題29]は、税制改正により110万円の基礎控除が適用されるようになったことをしているか問うものです。ただし、このときの基礎控除110万円は贈与者の人数に関わらず110万円の枠なので、出題のように父と母の両親から相続時精算課税制度を適用して贈与を受ける場合、基礎控除110万円は贈与額に応じて按分します。
贈与税の配偶者控除[問題30]、教育資金の一括贈与の贈与税の非課税の特例[問題31]、住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例[問題32]とも、基本的な知識を問うものでした。
贈与税の申告と納付[問題33]については、消去法で十分対応できる内容でした。(4問/全6問)
問8|不動産の相続税評価
土地・建物の評価[問題34,35※]は、評価対象の土地の利用条件、利用の単位を正確に理解すれば評価方法がすぐに理解できました。ただし建物の評価[問題36]については、建物の利用状況について[問題35]を受けての回答なので、併せて正解できると思います。
(※ 2024年12月2日追記)
[問題35]は貸家建付借地権の評価です。2022年第1回以来の出題のため、すぐには評価方法を判断できなかったかも知れません。
私道の相続税評価[問題37]はほぼ初出題だと思いますが、問題の設定や状況図を見れば、即答できるはずです。(2問/全4問)
問9|金融資産の相続税評価
上場株式の評価[問題38]は配当落ちに注意が必要でした。外貨預金の評価[問題39]は、必ず正答しておきたい出題でした。(1問/全2問)
問10|納税義務者
従来とほぼ同じ内容でした。海外在住者の相続にあたり、生前贈与を含めて、過去10年、”被相続人・相続人”がどこに居住していたのか”を判断できるかがポイントです。[問題40-41]
非居住無制限納税義務者や制限納税義務者における税額控除[問題42]、相続税の申告書の提出先[問題43]は、判断に迷う選択肢がありましたが、明確に可否判断できる選択肢が各問1つありました。(2問/全4問)
問11|事業承継(自社株の評価)
自社株の評価[問題44-46]【過去問の詳細解説】は確実に得点しましょう。
遺留分の特例[問題47]、譲渡制限株式[問題48]は、ほぼ定番です。概要だけでも理解しておきたい内容です。
事業承継に係る会社法の記述[問題49]、中小M&Aガイドライン[問題50]については、正確な知識・深い知識が必要な選択肢が続きました。難易度が高い出題でした。(4問/全7問)
合格ラインは
最近、金融資産やライフプランに次いで、難易度が上がっています。これまでとほぼ同水準だと予想します。「正解しておきたい」出題数は29問/全50問です。税制改正の内容を正確に理解しているかを問う出題で、合否が分かれるかと思います。
また、[問題35]の出題に関して追記を致しましたが、久しぶりの評価方法に苦慮した方が多かったため、さらに合格水準は28問程度に下がる可能性もあります。(2024年12月2日追記)
相続対策に関する出題がなく難易度が下がった印象もありますが、一方で、初出題も多く感じました。(※下記、筆者メモを参考に)
【筆者メモ】
- 回答は後回し→8題
- 従来より難題→13題
■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
金融|不動産|ライフ|リスク|タックス|相続
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