2023年第2回試験の分析(CFP®相続事業承継)

CFP相続

 2023年11月19日(日)に、CFP®試験・第2日程が終了しました。3課目は相続事業承継です。出題内容を確認したので、回答した結果わかったことや感想をまとめました。最後には気になる合格ラインのお知らせがあります。

全体の印象

 概ね、従来通りの出題構成でした。冒頭、法改正・税制改正など初出題が多くあり、戸惑うことが多かったことと思います。しかし、従来通りの出題も多く、これらに正確に対応していれば十分に合格ラインに到達できると思います。

 ここ最近、相続対策に関する出題が少なくなり、全般的に難易度が下がったように感じました。そして、不動産や金融商品の財産評価の出題傾向は基本事項を押さえていれば十分に乗り切れる内容でした。

 では、出題内容を振り返ります。※各段落の末尾の掲載は(正答したい問数/全出題数)です。

問1|相続の概要、民法の規定

 初出題や改正事項に関する出題が多く、回答に苦戦した方が多かったかも知れません。

 まず、民法上の相続分[問題1]、特別受益[問題2]、配偶者居住権[問題5]、認知[問題9]については必ず正答しておきたい水準でした。

 遺留分[問題3]、特定財産の承継[問題4]、特別の寄与[問題6]、相続の承認・放棄[問題7]に関しては難しい内容で詳細な知識が必要でしたが、いずれも明確に1つを選択することが可能な出題でした。相続人が相続人が不存在の場合の相続財産の清算手続き[問題8]は、本年2023年4月から施行されているルールで、今後の試験対策としても理解しておきたい内容です。(6問/全9問)

問2|遺言、成年後見

 遺言や後見制度については毎回出題されるので、できるだけ多く得点しておきたいです。

 自筆証書遺言や公正証書遺言[問題10]、任意後見制度[問題11]は正答しておきたい内容です。成年後見登記制度[問題12]に関しては、これまで以上に詳細な知識が必要であり、遺産分割前の相続預金の払い戻し制度(2018年改正)[問題13]は初出題でしたので、理解を深めておく必要があります。後日発売のテキストに解説を掲載します。

 共同相続人[問題14]、遺言執行者[問題15]は定番問題ですが、従来よりとは異なる出題傾向(内容)だったので、1問だけでも正答しておきたい水準でした。(4問/全6問)

問3|相続税の仕組み、課税価格の合計額

 相続税の課税財産の算出方法に関する出題です。

 生前贈与加算[問題16]、死亡保険金の非課税金額の利用方法[問題17]、債務控除[問題18]など、いずれも基本事項を問うもので、確実に得点しておきたい水準でした。なお、相続人が取得した財産に非課税金額を適用できるのは生命保険金(死亡保険金)や退職金であって、権利の相続(解約返戻金)には適用できないことに注意が必要です。(2問/全3問)

問4|相続税の総額

 非常に精緻な知識が必要でした。相続税における基礎控除額[問題19]、相続税の総額[問題20]を求めるものです。相続税の計算をするにあたり、相続人の数を「民法上の実子」の有無で判定します。相続税の総額を算出するにあたって核心を突く出題でした。

 未成年者控除[問題21]が18歳に改正されたこと、2割加算[問題22]、配偶者の税額軽減[問題23]【過去問の出題】について、できるだけ正答しておきたい内容です。(3問/全5問)

問5|相続税の申告、納付

 所得税の準確定申告について、疑問が多々あるなか”最も不適切”を選択する必要がありました。

 準確定申告[問題24]、相続税の申告手続き[問題25]、未分割である場合の相続税の手続き[問題27]に関しては、ややこし選択肢がありましたが、いずれも明らかに誤りである選択肢がありました。連帯納付[問題26]については、難しかったかも知れません。(2問/全4問)

問6|贈与税

 暦年課税の贈与税額[問題28]は、複数の贈与財産に一般税率と特例税率を適用する方法を正確に理解しておく必要がありました。相続時精算課税制度[問題29]は、必ず正答しておきたい内容です。

 事務所併用住宅の持ち分贈与[問題30]は、これまでも何度も出題されてきました。控除対象の範囲を正確に計算できる必要がありました。

  • 配偶者控除の適用対象となる金額
  • 居住用財産以外の贈与

 直系尊属からの贈与税の非課税の特例[問題31]、教育資金の一括贈与の贈与税の非課税の特例[問題32]は、いずれも従来レベルの出題内容でした。(4問/全5問)

問7|不動産の相続税評価

 土地・建物の評価[問題33-35]は、評価対象の土地の利用条件、利用の単位を正確に理解すれば評価方法がすぐに理解できました。生産緑地や都市計画区域に属する地域の評価[問題36]は細かい知識が必要な出題でした。(3問/全4問)

問8|金融資産の相続税評価

 年金受給権の相続税評価額[問題37]、外貨定期預金の評価[問題38]は、いずれも過去問を演習していれば、十分に対応できる内容でした。(1問/全2問)

問9|納税義務者

 海外在住者の相続にあたり、生前贈与を含めて、過去10年、”被相続人・相続人”がどこに居住していたのか”を判断できるかがポイントです。[問題39-41]

 非居住無制限納税義務者や制限納税義務者に対する課税対象[問題42]は、非課税の特例を含めてまとめて理解しておくと良いです。(2問/全4問)

問10|事業承継(自社株の評価)

 自社株の評価について、計算問題[問題43-45]【過去問の詳細解説】は確実に得点しておきたい内容です。遺留分の特例[問題46]、譲渡制限株式[問題47]に関しては、今回も詳細な知識が必要でしたが、明らかにひとつを選択できる出題でした。(3問/全5問) 

問11|事業承継(各種特例)

 いずれも出題の多い内容でした。譲渡制限会社[問題48]、贈与税の納税猶予・免除[問題49]、事業用小規模宅地の特例[問題50]は、難解な選択肢が多くありましたが、前問と同様、明らかにひとつを選択できる出題でした。(2問/全3問) 

さて合格ラインは

 これまでと同水準だと予想します。「正解しておきたい」出題数は32問/全50問でした。今回、相続対策に関する出題がなく難易度が下がった印象もありますが、一方で、初出題も多く従来と同水準の正答が必要だったと思います。

 【追記】
 2023年12月20日(水)に公表された合格ラインによれば、27問/全50問でした。予想よりもはるかに難しかったようです。なかでも、相続関連の知識(問1~2)には、苦戦される方が多かったようです。毎回、知識の更新は必要ではありますが、今回はあまりに多かったように感じます。

 なお、今回の試験(2023年第2回)の解答解説を含んだ「新・図解」は2023年12月27日(水)に発売予定です。

■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
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■試験対策(2024年第1回試験向け)
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 ・試験分析/相続 2021年 第1回 第2回
 ・試験分析/相続 2022年 第1回 第2回
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東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。