有形固定資産の取得にあたり収益(補助金など)が発生した場合、取得価額を圧縮(減額)することにより圧縮損を計上し、収益と圧縮損とを相殺して税負担を軽減させるのが圧縮記帳です。
圧縮記帳は、課税所得(=利益)を将来に繰り延べる制度です。
固定資産(棚卸資産は不可)の購入するにあたり、補助金が給付され、資産の購入に充てた場合、その資産は耐用年数で減価償却します。この時、以下のようになります。
- 初年度の課税所得について、補助金収入が益金となり、課税所得が増加。
- 損金は取得費ではなく減価償却費であるため、課税所得が増加。
これは、補助金だけでなく、保険金などでも同様です。たとえば火災などにより資産が滅失した場合、計上している金額よりも多くの保険金を受取れば益金となり、課税所得が増加することになります。
そのため、圧縮記帳という手法が考案されました。
受け取った補助金や保険金も課税対象ですが、補助金・保険金を受取った事業年度の課税を減らす方法です。資産保有期間全体で考えると税金は変わりませんが、課税の繰り延べにより、初年度の減税効果に期待ができます。
試験では、”損害保険金”を例に挙げ、保険差益を圧縮する事例での出題です。ここ数年は、圧縮後の”新簿価”を問うものばかりですが、念のため”圧縮額”ではないかの確認をお願いします。
目次
圧縮記帳を行ったかどうかで異なる事柄
■圧縮記帳しなかった場合
- 差益全体に課税
- 減価償却のメリット
■圧縮記帳した場合
- 場合によっては今回の課税なし
- 減価償却の減少(課税増)
- 将来、売却時の取得額は圧縮額(課税の繰り延べ)
具体的な計算(圧縮)方法
数式や理屈に触れるよりも、解答を見えれば概念が理解できると思いますので、さっそく下記の解答を参照ください。
2021年第1回(問題47)
・営業所建物(帳簿価額3,200万円)火災により全焼
2021年第1回(問題47)リスク管理
・火災保険金 3,800万円
・保険金を使って3ヵ月後に新たな営業所建物(代替資産) 3,500万円で取得
・滅失によって支出した経費 300万円
▶再取得建物の帳簿価額はいくらか。
2020年第2回(問題48)
・被保険自動車(帳簿価額400万円)が業務で走行中に衝突で全損
2020年第2回(問題48)リスク管理
・車両保険金 500万円
・保険金を使って1ヵ月後に同じ車種の車両(代替資産) 450万円で取得
・廃車等のために支出した費用 20万円
▶再取得車両の帳簿価額はいくらか。
2019年第2回(問題47)
・社屋建物(帳簿価額3,000万円)火災により全焼
2019年第2回(問題47)リスク管理
・火災保険金 5,200万円
・保険金を使って2ヵ月後に新たな社屋(代替資産) 3,500万円で取得
・滅失により支出した経費 200万円
▶再取得建物の帳簿価額はいくらか。
2019年第1回(問題47)
・倉庫建物(帳簿価格1,750万円)が火災により全焼
2019年第1回(問題47)リスク管理
・火災保険金 2,500万円
・保険金を使って2ヵ月後に新たな倉庫(代替資産) 2,250万円で取得
・滅失により支出した経費 250万円
▶再取得建物の帳簿価額はいくらか。
2018年第2回(問題47)
・被保険自動車(帳簿価格300万円)単独事故で全損
2018年第2回(問題47)リスク管理
・車両保険金 380万円
・保険金を使って3週間後に新たに同じ車種の車両(代替資産) 350万円で取得
・廃車等のために支出した費用 30万円
▶再取得車両の帳簿価額はいくらか。
2018年第1回(問題46)
・店舗建物(帳簿価額3,500万円)が火災により全焼
2018年第1回(問題46)リスク管理
・火災保険金 5,000万円
・保険金を使って2ヵ月後に新たな店舗(代替資産) 4,500万円で取得
・滅失により支出した経費 500万円
▶再取得建物の帳簿価額はいくらか。
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