2022年第1回試験の分析(CFP®リスクと保険)

 リスクと保険では、出題が以下の3つに分類されます。

  • 商品やしくみなどの知識を問うもの
  • 仕訳、税額の計算が必要なもの
  • 資料の読み取り問題

なかでも、資料の読み取り問題は素早く情報を読み取り、計算過程に注意を払う必要があります。若干出題傾向に変化があったものの、基本的な対策は同じで良い内容でした。

知識レベルはほどほどに、計算は定番。読み取りに集中。

  • 商品知識はこれまで通り、損害保険中心の出題でした。
  • 計算問題は、個人年金や収入保障保険の計算がなく、税金関連の計算問題は難易度が低かったように感じました。
  • 読み取り問題は、生命保険商品の商品性について2問、証券から保証額の計算が4問、損害保険の約款の読み取りが4問と従来通りの構成でした。回答に時間のかかる出題が集中する構成なので、回答時間をどのように配分するかがポイントです。

 さっそく出題内容を確認します。※各単元の文末(●問/全■問)は、「全■問のうち●問は正解しておきたい」という意味です。

問1|保険コンサルと法令、制度

 統計資料の読み取り(問題1)のほか、各種法令の理解でしたが、過去にも出題頻度の高かった内容でした。落ち着いて回答すれば得点源になったでしょう。(3問/全4問)

問2|保険契約の税務上の取り扱い

 年金の支払調書(問題5)をどのように読むかよりも「どういった場合に税金がかかるのか」「どのような税金が課税されるのか」を理解していれば正答できる内容です。その他、名義変更時の課税(問題6)、生命保険料控除(問題7)、一時所得(問題8)については、ミスを誘導する出題ではありませんでした。(3問/全4問)

問3|生命保険の見直し(証券の読み取り)

  • 複数回の保険事故があった場合に「消滅する特約」(問題10)
  • 保険料支払時、給付金、解約返戻金で適用する為替レートの違い(問題12)

 証券の細部まで確認しながらの回答になるため、回答に時間を要する出題でした。”ここの条件を見落とすと選択肢が変わる”という余裕があると、ずいぶん回答時間を短縮できそうです。試験本番ではなかなか余裕がなくコツコツ回答することになるでしょうが、まだまだ出題の序盤ですから、時間をかけていられない出題です。(2問/全4問)

問4|生命保険の見直しに必要な知識

 必要保証額、先進医療特約に関する一般的な知識、引受基準緩和型医療保険の商品性の理解度を問うものですが、あまり問題を読み込まなくても一般論として正答できるものが中心でした。(2問/全3問)

問5|自営業者の保障

 問4につづいて、一般論として正答できるもの(問題16-17)のほか、資料を読んで給付金を計算するもの(問題18)、個人事業から法人化にともなう名義変更時の仕訳(問題19)など、確実に得点しておきた内容です。仕訳についてはかなり出題頻度の高いものですので、「無償で譲り受ける場合」と「権利を買い取る場合」の仕訳は必ず理解しておきましょう。(3問/全4問)

問6|生命保険を活用した相続対策

 相続税における死亡保険金の課税対象(問題20)、代償分割(問題21)、2次相続対策(問題22)など定番問題でした。2次相続対策に関しては、変更前・変更後の契約者等をきちんと書き並べて理解・覚えるようにすれば必ず正答できます。1次相続の際に「何(保険金か、保険料か、権利か)に対して、どのように課税されたか(所得税・贈与税・相続税・非課税)」を判断できることがポイントですね。(2問/全3問)

問7|役員退職慰労金、事業保障資金

 ほぼ定番の内容でしたが、長期平準定期(問題25)について最高解約返礼率に応じた仕訳の分類が記載されていないため、仕訳の方法まで覚えておく必要がありました。

  • 最高解約返礼率50%未満→支払保険料の全額が損金
  • 同50%超70%以下→(当初4割期間)支払保険料の4割が資産
  • 同70%超85%以下→(当初4割期間)支払保険料の6割が資産
  • 同85%超→(当初10年間)最高解約率の90%など ※詳細略

 試験では上記だけ覚えておけば十分でしょう。役員の退職にあたっての仕訳は基本事項を理解しているかを問うものでした。(2問/全4問)

問8|従業員の福利厚生

 退職金規定(問題27)、中小企業退職金共済(問題28)は他の課目でも出題される内容でした。ハーフタックスプランについては必ず正答しておきたい内容です。(3問/全4問)

問9|損害保険のしくみ

 消滅時効、地震保険について、詳細に理解・暗記が必要な出題でした。(1問/全2問)

問10|損害保険の保険金(約款の読み取り)

 従来の出題と比べてミスを誘導するような部分が少なくなりましたが、しっかり最後まで条件を読む必要があります。時間の余裕をみて、回答順を考えておく必要があります。内容は難しくありません。過去問を解き慣れていれると注意点が分かる内容です。(2問/全4問)

問11|傷害保険の知識

 自賠責保険についてしっかり理解を深めておきましょう。自転車保険は、余裕があれば覚えておくスタンスで。(1問/全2問)

問12|自営業者の損害保険

 店舗総合保険(問題39)、店舗休業保険(問題40)、傷害保険・危険補償特約(問題41)、各種賠償責任保険(問題42)はいずれも定番問題です。細かいことより、ざっくり保障内容を理解することから始めましょう。「各選択肢が読み慣れた」と思えるくらい演習しておくと、各文章のニュアンスで正誤判定できるようになります。(2問/全4問)

問13|法人の損害保険

 自動車保険(問題44)、労働災害総合保険(問題45)は必ず正答しておきたい定番の出題でした。(2問/全3問)

問14|損害保険の経理処理(法人)

 積立普通傷害保険の経理処理(問題46-47)、圧縮記帳(問題48)の出題は必ず正答しましょう。多くの人が正答するでしょうから、取りこぼしの無いように。(3問/全3問)

問15|損害保険の税務(個人、個人事業主)

 地震保険料控除(問題49)、雑損控除や災害減免法(問題50)とも出題頻度が高いです。適用要件をを詳細に理解しておく必要があります。(2問/全2問)

さて合格ラインは

 合格ラインはこれまでと大差ないと思います。今回まとめた「正解しておきたい」出題数は33問/全50問としました。

※合格ライン;29問でした。(7月20日発表

 今回の試験(2022年第1回)の解答解説を含んだ「新・図解」は2022年8月初旬をめどに製作しておりますので、ご希望の方は、もう少しお待ちください。

■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
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 ・リスクと保険に合格したいあなたへ
 ・試験分析/リスク 2021年 第1回 第2回
 ・試験分析/リスク 2022年 第1回 第2回
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東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。