2023年第2回試験の分析(CFP®リスクと保険)

 2023年11月19日(日)に、CFP®試験・第2日程が終了しました。「リスクと保険」の出題内容を確認し、回答した結果わかったことなどを以下に記載します。最後に気になる合格ラインのお知らせもあります。

印象

 商品パンフレットの読み取り(生保商品)や経理処理など、定番の問題が続く一方で、

  • 公的年金や個人年金に係る雑所得
  • 定期保険の経理処理【注意】
  • 保険金の税務、保険料控除額

に関し、かなり細かい知識と計算要件の理解が必要でした。何度も出題されている分野は確実に得点したいところですが、初出題も多くあり、回答に時間がかかるだけでなく、正答にたどり着くのに相当な労力が必要であったように思います。

 生命保険、損害保険ともに資料(約款や商品パンフレット、証券)の読み取り問題は、従来通りの出題でしたので、回答順序をあらかじめ決めておくことが大切でしたね。

※各段落の末尾にあるのは(正答したい問数/全出題数)です。

問1|保険コンサルと法令、制度

 前納保険料の扱い[問題1]、クーリングオフ[問題2]は正答しておきたい内容です。ディスクロージャー資料[問題3]に関しては、細かい理解が必要でしたが、明らかに”選択肢.4”が不適切でした。保険会社向けの総合的な監督指針[問題4]はFPとして必ず理解しておきたい内容です。(3問/全4問)

問2|保険契約の税務上の取り扱い

 所得税について、典型的な出題が続きました。
 医療費控除[問題5]、総所得金額[問題7]については正答しておきたい水準でした。個人年金保険等の雑所得[問題6]はかなり厄介な計算問題でしたが前回と同様の出題でしたので、正答しておきたいです。また、生命保険料控除[問題8]ては”中途付加”を正確に理解しておく必要がありました。

 また今回は、個人年金の相続税評価に関する出題はありませんでしたが、過去問で演習をしておく必要があります。(2問/全4問)

問3|生命保険(証券の読み取り)

 生命保険商品の証券の読み取りは、各設定条件で給付・支給される条件を正確に判断することが大切です。各問で、即座に各給付の条件を確認するようにしましょう。

 なお、証券の読み取りには時間がかかるので、損保商品の約款の読み取りを含めて、最後に回答することをお勧めします。(1問/全3問)

問4|個人の保障、生活設計

 生活保障に関する基礎知識[問題12]、税務[問題13]については最近の定番問題ですので正答しておきたい内容です。利率保証型確定拠出年金保険[問題14]は初出題で、正答できなくても仕方のない内容でした。(2問/全3問)

問5|自営業者の保障

 保険契約の名義変更[問題15]は、契約状況と課税体系の基本を理解していれば十分に正答できる内容でした。法人成りに伴う経理処理[問題16]や、支払調書[問題17]、介護保険に関する資料の読み取り[問題18]も、即座に正答できるものでしたね。(3問/全4問)

問6|生命保険を活用した相続対策

 相続税の計算の流れを理解したうえで、どのように相続対策するか。毎回出題がありますが、今回は基本事項を問う出題ばかりでした。

 死亡保険金の課税価格[問題19]、代償分割の知識[問題20]、2次相続対策[問題21]はいずれも正答しておきた水準の出題でした。

 一時払い終身保険の資料の読み取りは、時間を要する内容でした。資料の読み取り問題は時間がかかるので、回答はいったん後回しにしておくのが良いでしょう。(3問/全4問)

問7|役員退職慰労金、事業保障資金

 役員退職慰労金[問題23]の出題は、条件(規定・第4条)を正確に読み取る必要がありました。少しクセのある出題にも感じました。生命保険契約の現物支給[問題24]は、かなり細かい知識が必要で正答できなくても仕方ありません。役員退職金の課税[問題25]は、難しい選択肢が並びましたが”明らかに正しい”選択肢がひとつありました。

 また、長期平準定期保険の経理処理[問題26]は、実務での経験を積んでいなければ正答できないような難易度の高い出題でした。経理処理が改定されてから毎回のように出題されているため、理解を深めておきたいところですが、ここで正答できるほどの知識が必要かは疑問です。実務においては調べることができれば十分だと思います。(2問/全4問)

問8|従業員の福利厚生

 死亡退職金の規定[問題27]による計算問題は、いかに正確に条件を読み取れるか(第3条)を問われました。[問題23]と同様、出題の趣旨からズレているように感じる出題です。

 ハーフタックスプランにおける経理処理[問題28]、中小企業退職金共済の退職金[問題29]、Bグループ保険の知識[問題30]は、必ず正答したい内容です。(3問/全4問)

問9|損害保険のしくみ

 契約者保護機構[問題31]、損害保険料の算定方法[問題32]は基本知識を問う定番問題。紛争解決機関[問題33]についても最近出題が多く、必ず理解しておきましょう。(2問/全3問)

問10|損害保険の保険金

 自動車保険[問題34]、ゴルファー保険[問題35]、医療総合保険[問題36]、ペット医療費用保険[問題37]など、何度も出題されている保険商品に関する出題でした。過去問で十分な取り組みをしていれば、どこに何が記載されているのかを瞬時に判断できるでしょうが、但し書き(上限など)には注意が必要ですので、最後にじっくり時間をかけて回答するのが良いでしょう。

 [問題35][問題37]は比較的、短時間で回答できると思います。(2問/全4問)

問11|損害保険商品

 地震保険[問題38]、自動車保険[問題39]に関して必ず理解しておきたい内容でした。(2問/全2問)

問12|個人事業主の損害保険

 施設所有(管理)者賠償責任保険[問題40]、必要経費[問題41]とも、従来からの出題が多く、必ず理解しておきたい内容でした。(2問/全2問)

問13|法人の損害保険

 企業活動のリスクに備えた保険商品の理解が必要な内容でした。拡張危険担保特約[問題42]、法人契約の自動車保険[問題43]、各種法人向け損害保険[問題45]については、理解をしておきたいところです。労働災害総合保険[問題44]はこれまでよりも細かい知識が必要でした。(3問/全4問)

問14|損害保険の経理処理(法人)

 損害保険の経理処理についての出題です。普通傷害保険[問題46]、自動車保険の保険金[問題47]については基本知識で十分対応できるものでした。いずれも”受取人が誰か”がポイントですね。

 圧縮記帳[問題48]は定番ですね。(2問/全3問)

 ※長期火災保険、積立普通傷害保険に関する出題が今回もありませんでしたが、今後も要注意です。

問15|損害保険の税務(個人、個人事業主)

 地震保険料控除[問題49]、損害賠償金や損害保険金の課税[問題50]は、基本知識を問うものでした。(2問/全2問)

さて合格ラインは

 合格ラインはこれまでより高いと予想します。生命保険関連(問題30まで)は難題が多かった一方で、損害保険(問題31以降)は比較的やさしい出題、従来と同様の出題が多くありました。なお、今回まとめた「正解しておきたい」出題数は34問/全50問でした。

 2023年12月20日(水)に合格ラインが公表されました。30問/全50問とのことで、予想よりもかなり難易度が高かったようです。資料の読み取り、生命保険の税務・仕訳など、回答に時間にかかる出題が前半に多かったことも影響しているかもしれません。

 一部かなりの難題がありましたが、全体的に”難しかった”とは言えません。過去問を何度も演習していれば確実に得点できる問題が多くありました。

 今回の試験(2023年第2回)の解答解説を含んだ「新・図解」は2023年12月27日(水)に発売予定です。

■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
 金融不動産ライフリスクタックス相続

■試験対策(2024年第1回試験向け)
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■CFP®試験・リスクと保険について
 ・リスクと保険に合格したいあなたへ
 ・試験分析/リスク 2021年 第1回 第2回
 ・試験分析/リスク 2022年 第1回 第2回
 ・試験分析/リスク 2023年 第1回 第2回

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。