2024年第1回試験の分析(CFP®相続事業承継)

CFP相続

 2024年6月16日(日)に、CFP®試験の第2日程が行われました。3課目めは相続・事業承継です。出題内容を確認し、回答して判明したことや感想などをまとめました。最後には気になる合格ライン予想をお伝えします。

全体の印象

 従来通りの出題構成ですした。しかし冒頭に、法改正の知識、初出題などが続き、判断に迷う出題がいくつもあったと推測します。

 相続税、贈与税について計算過程に改正事項があったことを問う出題がありました。詳細な知識が求められました。従来通りの出題の範囲で、多く正解しておく必要がありました。

 相続対策に関する出題が少なくなる一方で、事業承継対策の出題は減ることなく深い知識が必要になっています。

 以下、出題内容を振り返ります。※各段落の終わりに(正答したい問題数/全出題数)を記載しています。

問1|相続の概要、民法の規定

 初出題や改正事項に関する出題が多く、回答に苦戦した方が多かったと思います。

 民法上の相続分[問題1]、特別受益[問題3]は必ず正答しておきたい内容です。

 また、遺留分[問題2]や相続の承認・放棄[問題8]には難しい選択肢もありましたが、相続人の廃除[問題4]、特別の寄与[問題5]、配偶者居住権[問題7]、普通養子[問題10]と併せて正答しておきたいレベルの出題でした。

 相続土地帰属制度[問題6]、認知[問題9]に関しては難しかったかも知れません。

 難解な選択肢が散見される一方、多くが基本知識で正解しておきたい出題でした。(7問/全10問)

問2|遺言、成年後見

 遺言や後見制度については毎回出題されるので、できるだけ多く得点しておきたいです。全般、標準的な出題レベルでした。

 自筆証書遺言や公正証書遺言[問題11]、遺言の効力[問題12]、遺産分割協議[問題13]は、即答できる出題です。法定後見制度[問題14]、任意後見制度[問題15]には難しい選択肢がありましたが、消去法で正答できたと思います。(3問/全5問)

問3|相続税の仕組み、課税価格の合計額

 相続税の課税財産の算出方法に関する出題です。従来とほぼ同じ構成でしたが、税制改正等により難易度の高い出題もありました。

 死亡保険金の非課税金額の利用方法[問題16]では契約者貸付をどう扱うかが重要でした。契約者貸付は受取金額を控除せずに課税対象を計算し、のちに債務控除とするルールです。

 退職手当金等[問題17]については必ず正解を。債務控除[問題18]は前受家賃の扱いがポイントでした。

 生前贈与加算[問題19]は税制改正により、今後、加算の対象年が順次7年まで拡大されます。
出題にある2028年の相続では、
・2024年分からの贈与が加算対象になる
・改正されたことにより新たに加算対象となる資産から総額で100万円の控除ができる
といった内容を理解しておくことが必要でした。

 難しい出題の多かったですね。(2問/全4問)

問4|相続税の総額

 複雑な親族人等関係図でしたから、戸惑うことが多々あったかも知れません。

 相続税の総額[問題20]では、養子がいる場合や放棄した者がいる場合の相続人の判断ができたかがポイントでした。その際、相続分をどのように計算するかの判断も重要です。相続税の総額を求めるあたっては、税法における養子の数は「民法上の実子」の有無で判定します。相続税の計算過程において核心を突く出題でした。

 配偶者の税額軽減[問題21]【過去問の出題】、2割加算[問題22]、障害者控除[問題23]は、前回(2023年第2回)の出題とほぼ同じ内容でした。必ず正解しておきたい出題です。(3問/全4問)

問5|相続税の申告、納付

 相続税の物納[問題24]は判断に迷う選択肢がありました。こういうときには「最も不適切」がキーワードです。連帯納付義務[問題25]、相続税の申告手続き[問題26]、債務控除[問題27]については、過去に何度も出題があったので必ず正解しておきたいです。(3問/全4問)19/27

問6|贈与税・相続時精算課税制度

 暦年課税の贈与税額[問題28]は、従来通り、複数の贈与財産に対して、一般税率と特例税率を適用する方法を正確に計算できることが求められました。相続時精算課税制度における税額計算[問題29]は、税制改正により110万円の基礎控除が適用されるようになったことを知っていたかが問われました。

 店舗併用住宅の持ち分贈与[問題30]、相続時精算課税制度の要件[問題31]、教育資金の一括贈与の贈与税の非課税の特例[問題32]は、従来レベルの出題内容でした。(3問/全5問)

問7|不動産の相続税評価

 土地・建物の評価[問題33-35]は、評価対象の土地の利用条件、利用の単位を正確に理解すれば評価方法がすぐに理解できました。ただし建物の評価[問題35]については、建物の利用状況について細かいところまで注意が必要でした。。市街地農地の相続税評価[問題36]は、算式が提示さていたので、指示通りに計算すれば正答できたはずです。(2問/全4問)

問8|金融資産の相続税評価

 生命保険契約の相続税評価額[問題37]、外貨預金の評価[問題39]は、必ず正答しておきたい出題でした。場株式の評価[問題38]は、配当期待権(配当を受ける権利はあるが未配当である)の理解が必要でした。初出題で正答できなくても仕方ありません。(2問/全3問)

問9|納税義務者

 海外在住者の相続にあたり、生前贈与を含めて、過去10年、”被相続人・相続人”がどこに居住していたのか”を判断できるかがポイントです。[問題40-41]

 非居住無制限納税義務者や制限納税義務者における税額控除[問題42]、日米相続条約[問題43]は、判断に迷う選択肢がありましたが、明確に可否判断できる選択肢が各問1つありました。(2問/全4問)

問10|事業承継(自社株の評価)

 自社株の評価についての計算問題[問題44-46]【過去問の詳細解説】は確実に得点しましょう。同族株主の判定[問題47]、遺留分の特例[問題48]は従来から出題が続いているので正解したい一方、株式譲渡[問題49]や所在不明株主の特例[問題50]は、詳細な知識が必要でした。(4問/全7問) 

合格ラインは

 これまでとほぼ同水準でしょう。「正解しておきたい」出題数は31問/全50問です。税制改正の内容を正確に理解しているかを問う出題で、合否が分かれるかと思います。また、相続対策に関する出題がなく難易度が下がった印象もありますが、一方で、初出題も多く従来と同水準の正答が必要だったと感じました。

 【追記】
 2024年6月17日(水)に公表された合格ラインによれば、27問/全50問でした。予想よりもずいぶんと低かったようです。かなりの受験者が、贈与税などの改正事項(計算問題等)で苦戦したようです。今後は必須の知識ですので、必ず正確に理解しておくことが求められます。

■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
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東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。