2024年第2回試験の分析(CFP®タックス)

 2024年11月17日(日)に、CFP®試験・第2日程が終了しました。タックスプランの出題内容を確認し、回答して気づいたことや感想をまとめました。最後には、気になる合格ラインも掲載しました。

総評

 これまで(とくに2023年第2回2024年第1回)と同様に、回答時間のかかる出題が冒頭に集中しました。 ※各段落の末尾には(正答したい問題数/全出題数)を記載しています。

問1|個人の税務(給与所得、退職所得ほか)

 給与所得者の手取り金額[問題1]は、実質的に”住民税の計算”を問うものでした。確実に正答するためには、所得税での所得控除を正確に把握することが必要でした。

 配偶者特別控除[問題2]、退職金の手取り金額[問題3]は、問題文の”条件”をしっかり確認しておく必要がありました。そして、個人年金の収入がある場合の手取り金額[問題4]、公的年金の収入がある場合の手取り額[問題5]など、雑所得と給与所得の関係について十分に理解しているかを問う内容でした。(3問/全5問)

問2|不動産所得

 不動産所得における減価償却[問題6]、収支計算のルール[問題7]は必ず正答しておきたい内容です。キャッシュフロー[問題8]についても正答しておきたい内容でした。(2問/全3問)

問3|給与所得、一時所得

 給与所得における、控除額、非課税金額の判断[問題9]、一時払養老保険の受取に関する出題[問題10]は、契約条件に注意しながら、丁寧に計算をすすめる必要がありました。(2問/全2問)

問4|事業所得

 各問とも注意点に気づくけば容易に回答できるものでした。どれも、実務ではミスのないようにしておくべき内容です。

 青色申告[問題11]、必要経費の可否[問題12]、中古資産の減価償却[問題13]、予定納税[問題14]など、定番の出題ばかりでした。ここは大きな得点源です。(3問/全4問)

問5|個人事業の税務

 純損失の繰越控除[問題15]、事業所得の必要経費(人件費)[問題16]は基本的な知識を問うものでした。一方、国庫補助金への課税[問題17]、事業所得の必要経費(契約時の一時金)[問題18]については、判断に迷う項目があったかも知れません。(2問/全4問)

 2024年12月2日追記
 精査したところ、事業所得の必要経費[問題18]の計算において「借主」である場合の出題は従来殆どなく、また繰延資産に関しての出題も確認できず、かなりの難題だったと推察します。
  

問6-7|譲渡所得

 総合課税の譲渡所得[問題19]、一時所得[問題20]とも、所得税の計算方法の基本を問う内容でした。問題文を正確に理解する必要がありました。(1問/全2問)

問8|株式の譲渡についての課税

 短時間で回答できる定番問題が続きました。とくに、配当控除[問題21]、損益通算と繰越控除[問題22]、譲渡所得[問題23]について、必ず得点できるようにしましょう。

 ストックオプションの課税[問題24]は、今年改正があったので、押さえておきたい項目のひとつでした。しかし、基本的な理解を問うものだったので、必ず得点できるようにしておきたいところです。

 今回は配当所得に関する出題はありませんでしたが、併せて理解しておきたいところです。(3問/全4問)

問9|居住用不動産の譲渡

 前回までの試験【2023年第2回2024年第1回】と同様、居住用不動産の譲渡[問題25]の際、自宅建物の減価償却費の計算に注意が必要でした。また、各種特例については明確な記載があり、基本に忠実に回答すれば十分に対応できる内容でした。(1問/全1問)

問10|所得控除

 毎回似た内容の出題です。扶養控除(人的控除)[問題26]は、ひとり親控除の理解が必要でした。配偶者特別控除における所得の範囲[問題27]、医療費控除の適用範囲[問題28]に加え、久しぶりに社会保険料控除の適用範囲[問題29]の出題がありました。どれも、過去問への取り組み次第で十分に対応できる内容でした。(3問/全4問)

問11-14|損益通算、住宅ローン控除、繰越控除、総所得金額

 不動産所得における損益通算の対象額[問題30]、住宅ローン控除[問題31]、純損失の繰越控除[問題32]は定番です。大きな得点源でした。

 給与所得者における調整控除[問題33]については、このタイミングで出題されると、うっかり忘れてしまう内容かも知れません。(3問/全4問)

問題15-16|所得税額、

 所得税額の計算[問題34]においては、損益通算の方法、所得控除の適用方法・適用順序を問うもので、最近では定番の出題です。期限後申告の場合に適用・不適用となる項目の理解[問題35]についても、正確に理解しておきたい内容です。(1問/全2問)

問題17-18|消費税・個人事業税

 インボイス制度[問題36]、消費税の申告・納付[問題37]について、これまでよりもやや深い理解が必要な出題でした。一方、個人事業税の計算[問題38]については、容易に回答できるものでした。(2問/全3問)

問19|法人成り

 定番の出題が続きました。とくに、役員給与[問題39,41]は必ず正答しておきたい内容です。一方、法人税と所得税の違い[問題40]については、改めて確認をお願いします。(2問/全3問)

問20|損金不算入額(法人税)

 こちらも定番の出題が続きました。

 租税公課[問題42]、交際費[問題43]、役員給与[問題44]、繰越欠損金[問題46]については、正答が必須です。貸倒損失[問題45]は、やや状況の読み取りに苦戦するかも知れません。

2024年12月2日追記
 交際費の損金不算入額[問題43]の出題について過去の出題を確認したところ、「800万円を超える交際費」を不算入とする計算問題のみでした。今回のような「飲食費の50%を交際費」とする出題は文章題のみで、計算問題は初出題でした。

 今回は減価償却の出題【過去問の詳細解説】が無かったので、易しく感じた方が多かったのではないかと思います。(4問/全5問)

問21|法人と役員の取引

 個人(役員)から法人への低額譲渡[問題47]は複数の土地を”一の契約で”という点が重要でした。それに伴う土地価格の計上[問題48]は、過去問への取り組みができていれば正答できました。(1問/全2問)

問22|財務諸表(貸借対照表、損益計算書)

 貸借対照表の指標[問題49]は、損益計算書の指標[問題50]とも、落ち着いて回答すれば十分に対応できるものでした。最後にこの種の出題があると、苦戦する内容だと思います。(1問/全2問)

さて合格ラインは

 給与所得、損金計上において難題があった一方で、従来通りで容易に回答できるものが多くありました。合格ラインは、これまでより高く「正解しておきたい」出題数は34問/全50問としました。

 (2024年12月2日追記)
 上記[問題18]事業所得の必要経費、[問題43]交際費の損金不算入額などを考慮した結果、30問/全50問程度と考えを改めました。

(※以下、筆者メモを参考に)

【筆者メモ】

  • 回答は後回し→9題
  • 従来より難題→6題

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東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。