2022年第1回試験の分析(CFP®タックス)

 タックスプランニングの出題は、計算問題が中心でミスを誘発する出題に注意することです。落ち着いて回答すればかなり高得点が期待できますが、合格ラインも高くなるので、過去問等で「注意点」を確認しておく必要があります。

出題構成は従来通り。

  • 全50問のうち約8割(41問)が計算問題
  • 全50問のうち約6割(32問)が所得税関連

 難しいものから簡単なものまで、出題は様々で、問題ごとに頭を切り替える必要があります。また、回答に時間を要する出題は少なくなりました。とくに、所得税・住民税に関して「手取り額の計算」「給与所得金額の調整控除」の出題がほとんど無くなったことが特徴的です。

 それでは、回答して難易度を確認しましたのでお知らせします。
※各単元の文末(●問/全■問)は、「全■問のうち●問は正解しておきたい」という意味です。

問1|手取り額、総所得金額等

 前回はかなり時間を要する出題でしたが、今回は「ポイント」に気づけば短時間で回答できるものばかりでした。養老保険の解約返戻金(問題1)の保険期間、配偶者控除と配偶者特別控除(問題2-3)の違いを瞬時に判断できることが回答のコツです。(3問/全4問)

問2|不動産所得

 減価償却のルール(問題5-6)、キャッシュフロー(問題7)、事業的規模(問題8)など典型的な出題です。互いが関連しているため、わりと親切な出題構成でした。最近は「取壊し壊費」「立退料」に関する出題が多いので、経費にできる要件をしっかり確認しておく必要があります。(3問/全5問)

問3・4|事業所得

 経費の適用可否(問題10・14)、中古資産の減価償却(問題12)は、不動産所得と同様に典型的な出題です。減価償却については「償却月数」を確認する習慣をつけておきましょう。(3問/全5問)

問5|一時所得

 毎回出題があります。契約者、被保険者、受取人の関係により「所得税の課税対象となる契約」を判別できるか、さらに一時所得の計算方法(総所得金額に算入すべき金額)を理解しているかの確認問題です。(1問/全1問)

問6|退職所得・雑所得(年金)

 それぞれの所得を正確に計算できるかの出題です。勤続年数(問題16)、会社役員の場合(問題17)、保険会社からの年金と公的年金の扱い(問題18)など単純な出題です。今回は出題がありませんでしたが、給与収入と公的年金収入がある場合には調整が行われるので注意が必要です。(2問/全3問)

問7|株式の譲渡

 株式の取引口座の理解(問題19)、譲渡損失繰り越控除(問題20)、配当所得(問題21)、配当控除(問題22)の出題はすべて典型問題です。すべて正解しておきたい内容です。ミスを誘導する設定はありませんでした。(4問/全4問)

問8|不動産の譲渡

 居住用建物の減価償却(問題23)は最近出題が多いです。空き家にかかる譲渡所得(問題24)については計算問題として初めての出題で、各種特例の適用可否判断が問われるものでした。(1問/全2問)

問9|損益通算

 通勤用車両を譲渡したときの損失(問題25)について迷う出題でした。土地取得のための借入金利子をどのように算出するか(問題26)は、定番の出題です。(1問/全2問)

問10・11|所得控除・繰越控除

 人的控除(問題27)は扶養控除や寡婦控除、物的控除(問題28)は医療費控除の計算方法に関する出題でした。どちらも落ち着いて適用要件を正確に理解していれば正答できるレベルです。寡婦控除/ひとり親控除は最近改正された事項ですので、しばらく出題が続くと予想されます。

 繰越控除に関しては典型的な出題でしたので、必ず正答しましょう。(2問/全3問)

問12・13・14|所得税額・住宅ローン控除

 所得税額を算出するまでの一連の流れを正しく理解しているか(問題30)を問うものでした。各所得の計算、損益通算のルール、所得控除の扱いなどです。

 住宅ローン控除の適用要件(問題31)は細かい部分を問うものでしたので気にせずにおきましょう。期限後申告の場合の適用項目(問題32)については文章題での出題に代わり、計算問題となりました。損益通算は可能ですが、青色申告特別控除額は10万円となるなど、理解・判断できるようにしておきましょう。(2問/全3問)

問15|消費税

 初めて、一括比例配分方式での仕入税額計算(問題33)が出題されました。知識を生かせたかどうか問われる難題でした。また、課税売上となる取引の判断(問題34)も難しいものでした。ひょっとすると、問15での正答数が合否を分けたかも知れません。(1問/全2問)

問16|個人住民税・個人事業税

 個人住民税のしくみ、個人事業税の税額計算。いずれも典型的な出題でしたので、必ず正答しましょう。(2問/全2問)

問17|法人成り

 最近出題数が多い分野です。株主総会の議決権(問題37)、役員給与と給与所得(問題38-39)については必ず理解しておきたい内容です。ほぼ定型の出題です。(2問/全4問)

問18|損金不算入額など(法人税)

 租税公課(問題41)、交際費(問題42)、役員給与(問題43)、繰越欠損金(問題46)は即答できる必要があります。それほぞややこしい計算ではありません。単なる足し算・引き算です。

 減価償却費(問題44)に関しては、最近の過去問を演習できていれば難なく回答できるものでした。中小企業の特例などを十分に理解しておく必要があります。貸倒損失(問題45)は、表現こそ違いますが従来通りの内容でしたので適用可否を判断でれきば対応可能なレベルです。(4問/全6問)

問19・20|役員と法人の取引・財務諸表

 役員と法人間の取引については、定番の出題ですから正答しておきたい内容です。低額譲渡・譲受の場合の「収入(問題47)」「取得額(問題48)」の取り扱いは確実に理解しておきましょう。

 財務諸表に関しては、久しぶりに難易度の低い出題でした。用語の意味と計算方法を理解していれば十分に正答できるものです。(3問/全4問)

さて合格ラインは

 合格ラインはこれまでより高めではないかと予想します。今回まとめた「正解しておきたい」出題数は34問/全50問としました。ちょっと厳しめの評価ですが、それくらい余裕がないと「合格です!」とは言いにくいレベルの出題です。

※合格ライン;33問でした。やはり、高めでしたね。(7月20日発表)

 今回の試験(2022年第1回)の解答解説を含んだ「新・図解」は2022年8月初旬をめどに製作しておりますので、ご希望の方は、もう少しお待ちください。

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 ・試験分析/タックス 2021年 第1回 第2回
 ・試験分析/タックス 2022年 第1回 第2回
 ・試験分析/タックス 2023年 第1回 第2回

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。