2023年第1回試験の分析(CFP®タックス)

 2023年6月18日(日)に、CFP®試験・第2日程が終了しました。そのうち、タックスプランの出題内容を確認して、回答して気づいたことや感想をまとめました。最後に気になる合格ラインのお知らせもあります。

印象

 回答時間のかかる出題がなくなりました。引っ掛け要素となる出題が随所に見受けられました。
 出題内容を確認します。

 ※各段落の末尾にあるのは(正答したい問数/全出題数)です。

問1|給与所得者の手取り額

 最近は回答に時間のかかる問題を出題する傾向がありましたが、今回は要点に気づけば短時間で回答できるものでした。給与所得者の手取り額[問題1]、給与収入[問題3]は易しい内容でした。保険契約の解約による手取額[問題2]は、適用される所得税の税率が分かれば即答できるものでしたが、苦戦した人が多かったかも知れません。(2問/全3問)

問2|個人事業主の税務/事業所得

 個人事業の開業に関する届出[問題4]は細かな知識が必要でした。必要経費[問題5]については、定番ですので必ず正答したいところ、減価償却費[問題6]は白色申告者であることに惑わされず、また建物付属設備やソフトウェアは定額法が適用されることがポイントでした。(1問/全3問)

問3|不動産所得

 未収金等の扱い[問題7]、キャッシュフロー[問題10]については正答が必須です。一方、経費[問題8]に関して、白色申告者の場合の専従者給与の扱いは初めての出題でした。正答できなくても仕方ないかも知れません。取得価額[問題9]の算定は出題が多く、今後も、”経費となる範囲”との違いを正確に理解してたいところです。(2問/全4問)

問4|リタイア後の所得

 退職所得[問題11]は必ず正答しておきたい計算問題でしたが、問題文から設定を理解するまでに時間がかかったかも知れません。文章がややこしかったです。保険契約[問題12]の出題はリスク管理や相続事業承継でも出題される基本事項でした。

 給与収入と年金収入がある場合の調整控除[問題13]は、理解できていたでしょうか。ひっかけ要素を織り込んでいました。(2問/全3問)

問5|総合課税の譲渡所得

 短期譲渡であること、配偶者特別控除額の理解、適用される所得税率など、総合的な理解が必要でした。(1問/全1問)

問6|金融商品の課税

 ”難題が少ない”出題が並びました。株式の譲渡[問題15-16]、配当所得の申告[問題17]、配当控除[問題18]、損益通算と繰越控除[問題19]など、定番の出題でした。ただし、譲渡所得の計算にあたり、取得費の計算に手間取ったかも知れません。

 なお、税制改正が続くNISAに関しては出題がありませんでした。(4問/全5問)

問7|居住用不動産の譲渡

 居住用不動産の譲渡[問題20]について、”土地と建物で所有期間が異なる”ため、どのように特例を適用するのかが問われました。基本知識をフル活用し、対応する必要がありました。難題だったかもしれません。

 譲渡損失に関する特例[問題21]はかなり久しぶりの出題でした。2級/AFP試験ではときどき出題されますが、CFP®試験に臨むにあたり、忘れてしまった方も多かったのではないかと思います。(1問/全2問)

問8|損益通算

 ほぼ定番と言える出題でした。損益通算のルール、不動産所得における借入金利子の適用方法[問題22]を改めて理解しておく必要があります。(1問/全1問)

問9-10|所得控除・税額控除

 配偶者特別控除[問題23]、生命保険料控除[問題25]、社会保険料控除[問題27]は必ず得点しておきたい内容でした。

 人的控除[問題24]は寡婦控除・ひとり親控除の理解、医療費控除[問題26]はセルフメディケーション税制の理解が必要でした。どちらも、FP実務として情報提供できることは必要ですが、計算できる必要があるのかは疑問です。

 また、ふるさと納税[問題28]の出題は必ず正答しておきたい内容でした。(4問/全6問)

問11-12|繰越控除・損益通算

 期限後申告[問題29]の場合、”何が適用されないのか”を問うものでした。あまり難しい出題ではありませんでした。

 損益通算[問題30]では、所得控除、青色申告特別控除、退職所得の扱いを正確に理解しておく必要がありました。(2問/全2問)

問13|住宅ローン控除

 住宅ローン控除[問題31]は定番の出題で、前回同様、控除率0.7%に変更されていることを忘れていなかったでしょうか。また、妻の場合には、納付した所得税額が上限になることにも注意が必要でした。(1問/全1問)

問14-15|消費税、個人事業税

 消費税の課税/非課税の扱い[問題32]は必ず理解しておきたいところですが、簡易課税[問題33]は複数事業の場合に適用される”みなし仕入率”の判断が難しかったかも知れません。

 個人事業税[問題34]の計算方法について、繰越控除、青色申告特別控除、所得控除の扱いなど、基礎知識を問う内容でした。(2問/全3問)

問16|確定申告

 期限後申告[問題35,36]の知識が複数出題されるのは珍しいです。改めて、期限後申告や過少申告に関する知識をおさらいしておきましょう。併せて、更正の請求[問題37]の知識も。

 確定申告については相続・事業承継でも出題されることが多いので、贈与税や相続税と比較しながら覚えることが有効です。(2問/全3問)

問17-18|法人成り、役員と法人の取引

 役員給与の扱い[問題38]、役員の判定[問題39]、法人成り[問題40]に関して、難易度の低いものばかりでした。

 役員と法人の取引は、低額譲渡・譲受に該当するのか、また、複数の土地について”一の契約”であることの判断が要注意ポイントでした[問題41]。

 法人側の処理[問題42]として取得費には”譲渡時の時価”を採用することを覚えておきましょう。(3問/全5問)

問19|損金不算入額(法人税)

 とくに、租税公課[問題43]、交際費等[問題44]、役員給与[問題45]は必ず正答しておきたい水準でした。また、減価償却[問題46]【過去問の詳細解説】の特例をどのように適用するのか、貸倒損失[問題47]の条件などやや難易度の高い出題もありました。

 繰越欠損金の出題はありませんでしたね。(3問/全5問)

問20|生命保険契約の税務処理

 リスク管理では毎回出題される内容ですが、タックスでは初めての出題でした。リスク管理を受験、対策をしていた方にはラッキーな出題でした。とは言え、理解しておきたいところです。(1問/全1問)

問21|損益計算書・損益分岐点

 損益計算書について、容易に正答できる内容でした[問題49,50]【過去問の詳細解説】。過去問の演習を少しでもしていれば、短時間で必ず正答できる出題でした。(2問/全2問)

さて合格ラインは

 合格ラインはこれまでと同様、あるいは高めではないかと予想します。今回まとめた「正解しておきたい」出題数は34問/全50問としました。タックスを得意としている受験者が多く、それくらい余裕がないと「合格です!」とは言いにくいレベルの出題でした。とくに、所得税と法人税の出題がやさしかったように感じました。

【2023年7月20日追記】
 2023年7月19日に合格ラインが公表されました。31問以上が合格とのことです。ここ最近では、「やや難しかった」と言うより、ひっかけ要素が多かったことが影響したのでしょうか。

 今回の試験(2022年第2回)の解答解説を含んだ「新・図解」は2023年7月末発売を予定しています。

■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
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 ・タックスに合格したいあなたへ
 ・試験分析/タックス 2021年 第1回 第2回
 ・試験分析/タックス 2022年 第1回 第2回
 ・試験分析/タックス 2023年 第1回 第2回

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。