2023年第2回試験の分析(CFP®タックス)

 2023年11月19日(日)に、CFP®試験・第2日程が終了しました。今回の記事は、タックスプランの出題内容を確認し、回答して気づいたことや感想をまとめたものです。そして最後には、気になる合格ラインも掲載しました。(※あくまで個人の推測です)

全体の印象

 回答時間のかかる出題が冒頭に集中しました。また、初出題の内容や最近改正になった事項を問う出題が多く、難題が多かったように感じます。一方、従来通り、単純な計算でありながら引っ掛け要素のある問題が随所に見受けられました。
 それでは出題内容を確認します。※各段落の末尾にあるのは(正答したい問数/全出題数)です。

問1|個人の税務(給与所得、退職所得ほか)

 冒頭から難題つづきでした。給与所得・総所得金額の計算[問題1]では、扶養親族に特別障害者(身体障害1~2級、または精神障害1級)がいる場合の調整控除が適用できることに注意が必要でした。特定役員退職手当にかかる退職所得[問題2]は、令和4年(2022年)1月1日より退職所得控除額の計算方法が変更されました。退職所得については近年、多くの改正が行われているため、国税庁のwebサイト(No.2740No.2741など)確認しておく必要があります。

 手取り金額の増加額[問題3]は、最も時間のかかる問題です。ただし、夫に適用される所得税の税率と、所得控除の金額の変化からすぐに解答することも可能です。

 養老保険の手取り額[問題4]については、この商品が金融類似商品であることに気づけば即答できたはずです。共済金の手取り額[問題5]は基本的な出題でした。

 冒頭から気が滅入るような出題が続きましたね。(3問/全5問)

問2|個人事業主の税務(事業所得、譲渡所得など)

 純損失の繰越額[問題6]、青色申告[問題7]については基本的な事項を問うものでした。中古資産の減価償却費[問題8]は”共用月数”が引っ掛けポイントですね。譲渡所得[問題9]では短期・長期の区別、50万円特別控除、1/2ルールばかりを気にして、”ぜいたく品”だということを忘れていなかったでしょうか。身内に支払った費用[問題10]が経費にできるかは、定番ですので必ず正答したいところです。(4問/全5問)

問3|不動産所得

 青色申告の手続き[問題11]は、減価償却や消費税の届出と併せて理解しておきたい内容です。不動産所得における必要経費[問題12]は何度も出題された内容でした。

 減価償却費[問題13]は掲載の資産がすべて定額法しか適用できないこと、さらに10月からの供用であることがポイントでした。

 不動産所得・総所得金額[問題14]は収入の計上時期の理解を問うものでした。経費については土地取得のための借入金の利息の扱いについて正確な理解が必要でした。(2問/全4問)

問4-5|金融商品の課税

 やや時間のかかる出題がありましたが、全体的に易しく感じました。株式の譲渡所得[問題15]は基本に忠実に回答すれば十分に正答できます。配当所得[問題16]、損益通算と繰越控除[問題17]、配当控除[問題18]など、確実に得点しておきたい定番の出題ばかりでした。

 また、ストック・オプションの課税体系[問題19]は、最近出題が多くなっています。覚えることが少なく単純な計算なので、確実に得点しておきたい内容です。なお、今回もNISAに関しての出題はありませんでした。次回以降は要チェックです。(4問/全5問)

問6|居住用不動産の譲渡

 居住用不動産の譲渡[問題20]の際、建物の減価償却費の計算が難しかったかも知れません。借入金の肩代わりを条件とした贈与[問題21]は初出題で、譲渡所得とは何か?を知っておく必要がありました。どちらも難題です。(1問/全2問)

問7-8|退職所得、一時所得

 退職所得に係る手取り額[問題22]、保険契約の解約[問題23]は従来通りの出題内容でした。ここまで、引っ掛け要素の多い出題が続いたので、シンプルな出題に対して疑心暗鬼になったかも知れません。(2問/全2問)

問9|所得控除

 現役夫婦世帯の人的控除[問題24]は配偶者(妻)の一時所得をどのように理解するかがポイント、ひとり親世帯の人的控除[問題25]は亡くなった方の人的控除の理解がポイントでした。医療費控除[問題26]は前回と同様セルフメディケーション税制との比較が必要でした。どの問題も、細心の注意を払いながら回答する必要がありました。(2問/全3問)

問10|損益通算

 定番の出題でした。損益通算のルール[問題27]、不動産所得における借入金利子の適用方法[問題28]を必ず理解しておきましょう。(2問/全2問)

問11|住宅ローン控除

 住宅ローン控除[問題29]は定番ですね。控除率0.7%で計算することや、設例の夫の場合には、納付した所得税額が上限となることにも注意が必要でした。(1問/全1問)

問12|所得税の計算

 所得税額[30]を算出するにあたって、退職所得が分離課税であることが分かっていれば容易に回答できました。また、設例では一時所得が総合課税(源泉分離課税ではない)であり、マイナスとなるので損益通算できません。そして最後に、所得控除を忘れずに。(1問/全1問)

問13-14|消費税、個人事業税

 消費税の簡易課税制度[問題31]について、業種ごとの種別およびみなし仕入率を覚えておく必要がありました。難しかったかも知れません。

 個人事業税の計算[問題32]、個人住民税の知識[問題33]は従来レベルの出題で、必ず正解しておきたいものでした。(2問/全3問)

問15|確定申告

 海外転出にともなう課税・申告[問題34]の知識はあまり出題がありませんが、概ね推測が容易な内容でした。確定申告については相続・事業承継でも出題されることが多いので、贈与税や相続税と比較しながら覚えることも有効です。(1問/全1問)

問16|法人成り、法人税の申告

 役員給与の扱い[問題35]、法人税の申告にあたっての届出[問題38]に関しては、従来通りで難易度の低いものでした。

 一方、役員の判定[問題36]、株主の権利[問題37]については久しぶりの出題で、苦戦した方も多かったかも知れません。(2問/全4問)

問17|損金不算入額(法人税)

 定番の出題ばかりでしたが、今回も少しひねった出題がありました。

 租税公課[問題39]、交際費等[問題40]、繰越欠損金[問題44]は必ず正解しておきたい内容です。また、役員給与[問題41]については交通反則金や社宅の扱いが注意点でした。そもそも交通反則金に気づかなったかも知れませんね。

 また、減価償却[問題42]の特例の適用方法について、従来【過去問の詳細解説】よりさら正確な理解を求められました。貸倒損失[問題43]に関しては、条件の一部にかなりレベルの高い知識が必要でした。(4問/全6問)

問18|法人と役員の取引

 個人(役員)から法人への低額譲渡があった場合の税務に関する出題です。個人としての所得税・住民税額[問題45]、法人側での経理処理[問題46]は何度も出題されており、できるだけ正答しておきたい水準です。(1問/全2問)

問19|生命保険契約の税務処理

 保険契約の解約による法人所得の増減[問題47]は久しぶりの出題でしたが、知識がなくても、設例にある一連の手続きを正確に解釈すれば十分に正答できます。

 また、高解約返戻率の定期保険の経理処理[問題48]は、前回に続き非常に細かい知識が必要でした。正答できなくても仕方ありません。ただしリスク管理を受験する場合には必須の知識です。(1問/全2問)

問20|財務諸表(キャッシュフロー計算書)

 キャッシュフロー計算書を構成する3要素は、それぞれの構成内容[問題49]、増減が意味するところ[問題50]を必ず理解しておきましょう。ライフプランを受験する場合にも必須の知識です。これらは、過去問の演習を少しでもしていれば、短時間で回答できる出題でした。(1問/全2問)

さて合格ラインは

 難しい出題が多い一方、従来通りで容易に回答できるものも多く、合格ラインはこれまでと同様だと予想しました。今回まとめた「正解しておきたい」出題数は34問/全50問でした。タックスを得意としている受験者が多く、それくらい余裕がないと「合格です!」とは言いにくいレベルの出題でした。

 ですが。
 2023年12月20日(水)に公表された合格ラインは、27問/全50問で、過去最低(最難関)レベルということが分かりました。最新の知識(税制改正による変更事項)を理解していることや、従来からの引っ掛け要素、さらに回答までに時間のかかる出題が冒頭にあったことが影響しているのでしょう。

 なお、今回の試験(2023年第2回)の解答解説を含んだ「新・図解」は2023年12月27日(水)に発売する予定です。

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 ・タックスに合格したいあなたへ
 ・試験分析/タックス 2021年 第1回 第2回
 ・試験分析/タックス 2022年 第1回 第2回
 ・試験分析/タックス 2023年 第1回 第2回

東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。