2022年第1回試験の分析(CFP®相続)

CFP相続

 相続・事業承継は過去問と類似した問題が出題されます。本試験までにどれだけ回答演習したかで合否が分かれると言っても良いくらいです。今回もその傾向は変わりませんでした。

出題の内容はほぼ変わらず、難易度は低下

 出題構成の変化が感じられたのは以下の通りです。

  • 相続分の出題が無かった
  • 贈与に関する出題が増えた
  • 計算問題が増えた(28問)
  • 全体的に難易度が低下(とくに財産評価、事業承継)

 前半~中盤にややこしい出題があっても、後半には易しい出題が多かったため、回答順によっては相当余裕が出たではないかと推測します。細かくみていきましょう。
※各単元の文末(●問/全■問)は、「全■問のうち●問は正解しておきたい」という意味です。

問1|相続の概要

 寄与分(問題1)、特別受益(問題2)ともに計算問題として出題されたのは珍しいことです。2次相続(問題3)については「配偶者居住権とその敷地利用権」が相続財産とならないことが注意点です。

 養子縁組(問題4)、遺産分割(問題5)、遺留分(問題6)、相続の承認と放棄(問題7)については必ず押さえておきたい知識を問うものでした。

 相続人の不在(問題8)、欠格(問題9)は、細かいところまで知識が必要でした。(6問/全9問)

問2|遺言・成年後見

 自筆証書遺言(問題10)、任意後見制度(問題11)、成年後見登記制度(問題12)いずれも最近は必ず問われる内容です。(2問/全3問)

問3|相続税の仕組み・課税財産

 生前贈与財産の対象となる”人物”と”財産の額”はきちんと理解しておく必要があります(問題13)。ほかにも生命保険金の非課税金額(問題14)、退職手当金等の非課税金額(問題15)、債務子所の対象(問題16)など、いずれも定番中の定番!です。どれも得点しておく必要のあるレベルの出題でした。(4問/全4問)

問4|課税遺産総額、相続税額など

 相続人の人数、相続分を理解している前提で問題が進行します。
 基礎控除(問題17)、相続税の総額(問題18)は従来通りの出題でした。やや複雑な家族構成でしたので、実子がいる場合の養子の人数制限について正確に判断できることが大切です。

 各人の相続税額に関して、配偶者の税額軽減(問題19)【過去問の詳しい解説】、贈与税額控除(問題20)の計算ルール、障害者控除(問題21)の計算方法はいずれも外せない出題です。(4問/全5問)

問5|相続対策

 課税遺産総額の引き下げ効果(問題22)は1問だけになってしまいました。従来は合否を分ける分野だったので、得意な人にとっては残念なことです。信託(問題23)に関しては、知識がなくても一般論として正否を判断できるレベルの問いでした。(1問/全2問)

問6|相続税の申告・納付

 相続税の申告・納付(問題24)は、ミスを誘導する出題です。正しくは「1,000以下かつ3年」ですね。準確定申告(問題25)、申告手続き(問題26)は少し難しい内容でした。正解以外の選択肢を的確に正誤判定できたかどうか、ですね。(2問/全3問)

問7|贈与税

 贈与税額(問題27)は贈与者ごとに適用税率を判別できるか、相続時精算課税(問題28)は非課税枠の適用方法の理解、配偶者控除(問題29)は定番の”持ち分贈与の特例”【過去問の詳しい解説】を正しく理解しているかを問うものでした。どれも定番ですから正答したいところですが、少し時間のかかるものもあるので、落ち着いて回答することが大切ですね。

 知識を問うものは、相続時精算課税(問題30)、贈与税の課税対象(問題31)、そして教育資金の一括贈与の特例(問題32)、結婚・子育て贈与の特例(問題33)とも”じっくり誤りを探す”ことを意識すると良いでしょう。特例については、少しずつ難しくなっているようです。(5問/全7問)

問8|不動産の相続税評価

 登場人物をきちんと理解したうえで、何の評価をするのか理解することから始まります。

  • (問題34)借地に建つ物件を貸している→貸家建付借地権
  • (問題35)貸家
  • (問題36)土地のすべてを取得し、建物を賃貸→貸家建付地
  • (問題37)居住用宅地、貸付事業用宅地の併用は、圧縮効果の高いほうを優先適用

どれも”ちょっとした推理”が必要だったかも知れません。これらが正答できていれば、合格の確率が非常に高いです。(3問/全4問)

問9|金融資産の相続税評価

  • ETF(問題38)は上場株式と同じ評価方法【過去問の詳しい解説
  • 外貨預金(問題39)の評価にはTTBを使う
  • 条件付きの上場株式(問題40)は課税時期における最終価格

 いずれも過去には文章題で出題されることが多かったので、計算問題となると戸惑うかも知れませんね。(2問/全3問)

問10|納税義務者

 毎回定番の”海外在住者”の相続です。「被相続人、相続人ともに10年」がキーワードです。長男(問題41)が無制限納税義務者、長女(問題42)が制限納税義務者だとすぐに判断できることと、債務の適用範囲を判断できれば十分です。

 制限納税義務者の課税対象(問題43)、申告・納付手続き(問題44)は何度か出題がありましたが、これだけまとめて問われると混乱したかもしれません。(2問/全4問)

問11|事業承継

 自社株の評価(問題45-47)が簡素化され【詳しい解答解説】、即答できるレベルの出題でした。面倒な計算がなかったのですべて正解したいところです。同族株主となる贈与(問題48)のほうが難題でした。

 非上場株についての特例(問題49)、遺留分の特例(問題50)はこれまでと同レベルの出題でした。(4問/全6問)

さて合格ラインは

 合格ラインはこれまでより高いと思います。上記「正解しておきたい」出題数は35問/全50問としました。厳しめの評価ですが、それくらいの余裕がないと絶対合格です!とは言いにくいです。

※合格ライン;31問でした。やや高めでしたね。(7月20日発表

  • ミスを誘導する出題がほとんどなかった
  • 計算に時間のかかる出題が少なかった

過去問をしっかり演習していて、丁寧に回答できればかなりの高得点がでるはずです。

 今回の試験(2022年第1回)の解答解説を含んだ「新・図解」は2022年8月初旬をめどに製作しておりますので、ご希望の方は、もう少しお待ちください。

■合格したいあなたへ(各課目の要点解説)
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東京うまれ。札幌、東京、大阪、岡山など、全国各地でセミナーや講演活動を行い、好評を博す。2013年より、日経新聞の読み方教室、資産運用や税金対策、資格取得講座を中心に、”見えるお金、分かるお金を、使えるお金に。。。”の探究を楽しんでいる。